化石研ニュース82
No. 80

最終更新日:2004/10/22

   
2002年6月15日発行


第20回(通算117回)化石研究会
 2002年総会・学術大会のご案内・プログラムとお知らせ

 2002年7月6日(土)・7日(日)に,大阪市立自然史博物館において,第20回(通算117回)化石研究会総会・学術大会を開催いたします.特別講演,一般講演(口頭・ポスター)などのプログラムを予定していますので,ふるってご参加ください.

★プログラム★

日 時:2002年7月6日(土)・7日(日)
場 所:大阪市立自然史博物館
 〒546-0034 大阪市東住吉区長居公園1-23
 世話人代表:石井久夫会員
 電話06-6697-6221(代),FAX 06-6697-6225

参加費(資料代):500円

交通:地下鉄御堂筋線またはJR阪和線「長居(ながい)」駅から徒歩約10〜15分.地下鉄は3番出口を出て長居公園内を東に向かう)

日 程
7月6日  09:30-11:30  運営委員会
    13:30-15:00  特別講演(普及講演)      講堂
    15:15-16:00  一般講演(口頭)         集会室
    16:00-17:00  総会                 集会室
    17:30-19:30  懇親会(中華料理屋)

7日  09:30-12:00  一般講演(口頭)         集会室
    13:00-14:00  一般講演(ポスター)
    14:00-15:00  特別展示・館内収蔵庫等見学

 ★特別講演「貝殻のミクロの世界」★

 7月6日(土)午後1時30分〜午後3時
 講演:小林巌雄氏(新潟大学名誉教授)
 会場:大阪市立自然史博物館 講堂
 主催:化石研究会・大阪市立自然史博物館

(市民向け案内から)
 貝殻を電子顕微鏡で見ると,規則正しく鉱物がならんで作られているのがわかります.これらの鉱物は,生物が自らつくったもので,その並び方は種類ごとにさまざま型をもっています.日本で最も早い時期から,生体鉱物の研究に取り組んでこられた成果を,身近な貝殻を中心に,やさしくお話ししていただきます.
 
 ◆一般講演プログラム◆

 口頭発表:7月6日(土)
 15:15 二枚貝類ユキガイ属に見る大陸沿岸系とインド−西太平洋フォーナの関係
                       −−−−−石井久夫(大阪市立自然史博物館)
 15:30 淡水性腹足類カワニナ属の系統関係について
  −−−神谷敏詩°・橋本 崇(東北大・理)・島本昌憲(東北大・総合学術博物館)
 15:45 2001年夏ヨーロッパ歯の古生物学の旅
                    −−−−−後藤仁敏(鶴見大・歯学部解剖学教室)

7月7日(日)
 9:30 北海道野幌丘陵産長鼻類化石の分類の再検討
                       −−−−−樽野博幸(大阪市立自然史博物館)
 9:45 哺乳類の歯式と歯種の問題について
  −−−−−小澤幸重°・岩佐由香・横田ルミ・鈴木久仁博(日本大・松戸歯学部)
 10:00 気屯標本の再検討ーDesmostylusの歯式に関して
               −−−−−鈴木久仁博°・小澤幸重(日本大・松戸歯学部)
 10:15 魚類の歯胚の組織構造と機能について
              −−−−−笹川一郎(日本歯科大・新潟歯学部解剖学教室)

 10:30-11:00 休憩

 11:00 象牙質アパタイト結晶の配向性と組織構造
       −−−−−三島弘幸°・寒河江登志朗・小澤幸重(日本大・松戸歯学部)
 11:15 エナメル質の最初の結晶形成についての形態学的研究
                  −−−−−小澤幸重°・岩佐由香(日本大・松戸歯学部)
 11:30 ヒトの下顎大臼歯の樋状根の形成に関する進化学的考察
  −−−高橋正志°(日本歯科大新潟短大)・後藤真一(日本歯科大・新潟歯学部)
 11:45 オホーツク人に見る歯の咬耗過程
                    −−−−−小寺春人(鶴見大・歯学部解剖学教室)
 12:00 クモヒトデのつくる休息痕ークシノハクモヒトデの例−
                             −−−−−石田吉明(都立千歳丘高)

 12:15-13:00 昼食

 ポスター発表:13:15〜
 秩父盆地中新統最下部の生痕化石群集
                    −−−−−−−小幡喜一(埼玉県立自然史博物館)

 <ポスター発表追加募集>
 一般講演の申込みの締切が早すぎたためか,講演数がやや少なく,ポスター発表に限って追加募集します.締切は,発表要旨原稿の締め切り日と同じく6月23日(日)までとします.申込みと同時に発表要旨原稿もお送りください.
◆ポスター発表は、横90?、縦160?のスペースを用意しています。

 要旨原稿(締め切り6月23日−前回のお知らせより一週間延期しました)
 この原稿は後日,会誌に掲載されます.

 研究発表要旨の原稿を6月23日(日)までに,下記へお送りください.原稿はパソコン使用の場合,A4紙にフォントサイズ12で,本文は1行38字×13行,上段に演題名,発表者氏名,所属,下段に英文タイトルと著者名を入れ,郵送の場合はフロッピーとハードコピーをあわせてお送りください.Eメイルの場合は,上記の字数の範囲内で本文中に書き込み,添付書類では送らないでください.今回の申込みはすべてEメイルでいただき,編集上もEメイルがベストですが,むろん手書き原稿も可です.

◆口頭発表には次の機器使用できます.
   液晶プロジェクター(ビデオ,パソコン接続可)
   35mmスライドプロジェクター
   オーバーヘッドプロジェクター

大阪市自然史博物館からのお知らせ

 総会・学術大会の初日7月6日(土)から,下記の通り,第31回特別展「化石からたどる植物の進化−陸に上がった植物のあゆみ−」を開催します.じつは,この展示会を化石研究会会員の皆様に見ていただき,いろいろとご意見をいただくために,総会の日程を調整させていただきました.特別展の会場が総会・学術大会とは別館となり,自由に出入りもできませんので,プログラム2日目に展示案内の時間を設けました.この展示会を企画し準備した塚腰会員がご案内いたしますので,お楽しみにしてください.また,当館は昨年4月,新しい収蔵庫と地域自然誌をテーマにした展示室(無料),そして特別展の会場であるネイチャーホール等をオープンいたしました.あわせてご覧になっていただく予定です.

 なお,7月5日(金)またはそれ以前から大阪に来られる方へお願いします.自然史博物館の館員は,7月6日(土)の特別展オープンに向けて準備が追い込みとなる見込みです.急に来館されても応対できませんので,どうかご承知置きください.

 ★第31回特別展のご案内★

 「化石からたどる植物の進化−陸に上がった植物のあゆみ−」

 陸上植物は約5億年前に藻類から進化して水中から陸上へ進出し,緑豊かな地球環境をつくりだしてきました.植物が体のつくりや生殖方法を進化させてきた5億年の歴史を日本や世界各地から産出した化石をもとに紹介します.植物の進化を,化石をもとにじっくり見ることができ,地球環境の理解にもつながります.多数ご来館ください.

 主な展示物:・約2億2千万年前の巨大珪化木(直径1m),約4億年前の森林をつくったシダ植物の樹幹と担根体(根を付けていた器官,長さ1m),最初の種子植物の種子,和泉層群から産出する約7000万年前の被子植物,神戸層群(約3000万年前)の植物化石など.

●会期:7月6日(土)〜9月1日(日)(休館日:毎週月曜日)
●会場:自然史博物館 ネイチャーホール(花と緑と自然の情報センター2階)
●観覧料:大人400円,高校・大学生300円.
     中学生以下,障害者の方,大阪市内在住の65歳以上の方は無料

■特別展普及講演会「陸に上がった植物のあゆみ」

 私たちの身近にある植物はどのような進化の道をたどって現在にいたったのでしょうか.植物化石と現生植物の最近の研究をふまえて,陸上植物の起源と進化について講演していただきます.

●日時:7月21日(日)午後1時〜午後4時
●場所:自然史博物館講堂
●演題:
「植物は陸に上がった後どうしたか」加藤雅啓氏(東京大学)
「化石の果実はおいしかったか」  西田治文氏(中央大学)

 ★プレ巡検★

 “なぎビカリアミュージアムとパレオパラドキシアのいる津山郷土博物館”

 中新統勝田層群の分布する岡山県の博物館と化石産地をめぐる日帰り巡検を企画しました.特別展の準備があり,プレ巡検は無理と考えていたのですが,ポストでは上記の博物館が休館となりますので,少々無理して7月5日(金)におこなうことを考えています.平日でもあり,どのくらいの方が参加されるのかわかりませんので,とりあえず希望をお聞きします.大阪市内発着の予定です. 

 希望される方は,石井久夫会員宛,E-mailまたはハガキかFaxでご希望,諸条件を含めてお知らせください.アドレス等は前記のとおりです.

<宿泊>
 宿泊はとくにあっせんはいたしませんが,朝食つき5000円の旅館が空いていれば紹介いたします.先着順.また博物館と同じ長居公園内にユースホステルがあり,門限は23時ですが,格安で泊まれます.こちらは各自お申し込みください.



[追悼文]
古生物学者 スティーブン・J・グールド氏を偲んで
後藤仁敏

 日本でもっともよく知られている古生物学者でハーバード大学教授のスティーブン・J・グールド氏が、去る5月20日にニューヨークの自宅で逝去された。享年60歳の若さであった。20年ほど前から煩っていた腹膜の癌が肺や脳に転移したためである。ここに、氏の業績を偲び、ささやかな追悼文をしたためたい。

 氏は、1942年にニューヨークで生まれる。5歳の時に父親に連れられてニューヨークのアメリカ自然史博物館に行き、ティラノサウルスを見たことが古生物学に進むきっかけになったという。オハイオ州のアンチオック大学卒業後、1967年にコロンビア大学から博士号を取得している。26歳の若さでハーバード大学助教授となり、1973年に同大学教授に昇格している。

 彼の最大の功績は、多くの著書により古生物学的進化論を普及したことであろう。彼の著書の多くは、邦訳されており、日本でも人気を集めている。とくに、アメリカ自然史博物館発行の「ナチュラル・ヒストリー」誌に、1974年1月号から2001年1月号まで、毎月欠かさず300回にわたって連載された随筆は、10冊の本となって出版されている。日本でも、『ダーウィン以来』から、『ダ・ヴィンチの二枚貝』(すべて早川書房)まで8冊が上下2巻ずつに分かれて計16冊が出版されている。

 これらの随筆集では、専門の古生物学や進化論を中心に、科学・文学・思想・芸術、さらには歴史・教育・社会から野球や映画まで、過去と現在の問題が縦横無尽に語られている。そこには、ダーウィンやアガシーらの科学者だけでなく、マルクスやエンゲルスもしばしば登場する。

 そのなかで、アメリカで今なおはびころうとしている創造論と闘争し、進化論と科学を養護し、普及している(この点では、日本でも歴史教科書に神話が登場する今日、決して他人事では済まされない)。また、彼は、自分自身が欧米でながく迫害されてきたユダヤ人であることから、人種・性別などによる差別に敏感で、人権を守るためにも闘っている。『人間の測りまちがい』(河出書房新社)では、解剖学・人類学などの「科学的データ」による人間の差別が如何に間違っているかを、徹底的に暴露している。ユダヤ人の虐殺だけでなく、白人によるアメリカ原住民の大量虐殺もするどく批判している。

 また、アフリカの小さな農村での一女性との対話をもとに全人類の友愛を訴えている。さらに、米国の理科教育を発展させるために軍事費を削減して、教師の給与を倍増すべきだとも主張している。わが国にも、多くの文を書いている科学随筆家がいるが、このように差別や非科学的な思想と闘うことが少ないのは残念である。

 彼の本来の専門は陸生の巻貝化石の研究であるが、脊椎動物や人類学の知識も相当なものである。また、最新の遺伝子に関する分子生物学にも触れてはいるが、彼の学問の土台は、あくまでも古生物学と比較解剖学などの広い自然史学であった。その点でも、狭い専門の枠にはまっている日本の科学者は見習うべきであろう。

 反面、つねに定説を批判する否定的精神の持ち主であることは評価できるが、時折、従来の総合的な学説まで否定する態度は、行き過ぎではないかと思われる。彼は、自分が不可知論者であると告白している。

 彼が僚友のナイルズ・エルドリッジ氏と共に1972年に提唱した「断続平衡説」は、進化が徐々に進行するのではなく、断続的に突然起こる、と主張している。しかし、それは進化の一つの局面の誇張であると私には思われる。また、進化をすべて偶然の結果と見て、偶然性が必然性に転化するのを理解しないのはどうだろうか。さらに、大著『個体発生と系統発生』(工作舎)では、ヘッケルの反復説を復権させるのではなく、それを否定する「ネオテニー説」に陥っているのも残念なことである(井尻ほか, 1991, 地球科学, 45巻1号参照)。

 多くの著書を残したが、この3月に1400ページを超える大著『進化論の構造』を出版したという。古生物学者の井尻正二氏が死の間際まで『古生物学的進化論の体系』(化石研双書1号)を執筆していたことと比較されて興味深い。

 生粋のニューヨーク育ちであるのに、京都の風景や盆石を愛する人でもあった。いずれにしても氏は、20世紀を代表する古生物学者であったと言えよう。その学説の今後の展開が期待されていたのに、あまりにも若い死は、本当に惜しまれてならない。



[化石研究の道具No.2]
ビューツバル Butvar

 用途:化石の強化剤。ブタバール、ビュートバーの名称は同じ。ビューツバルとの読み方は、製造元の日本支社の表示による。成分は、ポリビニール・ブチラールPVB樹脂である。

 この強化剤は、主に人類学の分野で人骨の強化に使用されてきた。人骨ばかりでなく、ひろく化石骨の強化に適している。使用法は、粉末の本剤をアセトンで溶解して、液状にしたものをスポイトで化石に垂らす。濃度をいろいろに調整し、高濃度のものは接着剤として、うすくしたものは浸透強化剤として使用できる。ただし、化石に水が含まれていると白濁する。仕上がりは、やや光沢があるものの元の自然な色調が失われずにきれいである。また、化石の重量があまり増加しないのもよい。

 強度に関しては、パラロイドなのどの他の樹脂と比較試験をやっていないので不明である。ともかく簡便なのがおすすめである。

 この樹脂は、防犯用ガラスとして2枚のガラスを接着するために開発された。そのほか、透過型電子顕微鏡の試料をのせる支持膜としても使用されている。

 価格:現在、小売されているのは電顕用の支持膜としてのみで、50g/4000円(日新EM03-3355-3001)である。製造元から購入するさいは、ドラム缶単位によるので、共同購入が望ましい。

問い合わせ先:ソルーシア・ジャパン
電話0120-306092



【図書案内】

Colbert's Evolution of the Vertebrates 5th.
 H Colbert, M. Morales and E.C. Minkoff,著
 Wiley-Liss出版.576頁.2001年9月刊.
 $145.00.

 脊椎動物の進化史を綴り、定評のある本の最新版。現代の進歩を取り入れ完全に書き直されている。特にコノドント、恐竜、猿類、さらに鳥類の初期の進化についての最新データが加わっている。



Biology of the Cell.4版.
 B Alberts, A Johnson, J Lewis, M. Raff, K. Roberts and P Walter著.
 Molecular, Garland Science出版.CD-ROM付き.1463頁.2002年3月刊.
11,600円(ペーパーバック). 

  国内外で広く使用されている細胞生物学の教科書の最新版、特に遺伝子関連の部分が充実した。



ルーシーの膝―人類進化のシナリオ
 ヴィ コバン著、馬場悠男・奈良貴史訳
 紀伊国屋書店2002,222p,
\2,000 

  「イースト・サイド・ストーリー」の最新版。まさしく学際的な人類学の読み物。



[学会案内]

  • European Association of Veterinary Anatomists XXIVth Congress
     期間:2002年7月21−25日
     場所:Brno, Czech Republic
     http://www.iach.cz/Ige/EAVA2002.html
  • Gordon Reseach Conferrence, Biomineralization
     期間:2002年8月11−16日
     場所:New England, USA
     http://www.grc,org
  • Fred Wilt <wilt@socrates.Berkeley.EDU> International Symposium Tooth Structure and Evolution: Odontology2002
     期間:2002年9月15−19日
     場所:長野県軽井沢、日本大学軽井沢研修所
     http://www2.mascat.nihon-u.ac.jp/ODONTO2002/
     2002年度エナメル質比較懇話会との同時開催
     kuniq@mascat.nihon-u.ac.jp
  • 第11回硬組織生物学会総会
     期間:2002年9月14日
     場所:日本大学松戸歯学部
     特別講演:渡部哲光South Carolina大学名誉
     教授「バイオミネラリゼーションの起源と進化」
     教育講演:平山廉帝京平成大学助教授「恐竜やカメ類の進化について」
     sakae@mascat.nihon-u.ac.jp
     http://www.htbiol.gr.jp
  • The 15th international Congress on Electron Microscopy (ICEM 15)
     期間:2002年9月1−6日
     場所:International Convention Centre,
     Durban, South Africa
     http://www.icem15.com


原稿募集

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