化石研ニュース  No.100

 化石研ニュース No.100 
 2007年10月10日発行

 編集・発行:化石研究会事務局 〒525-0001
 滋賀県草津市下物町1091番地
 滋賀県立琵琶湖博物館 地学研究室内
 TEL. 077-568-4828 FAX. 077-568-4850
 http://www.kaseki.jp

最終更新日:2007年10月13日


   

第128回例会のお知らせ

 下記のとおり例会を開催いたします.今回は,恐竜学の最前線の話題を
4人の活躍している方々にしていただきます.
会員の方,非会員の方に関わらずお誘いの上,ご参加ください.

    ■日時:2007年11月11日(日)午後1時から
    ■会場:早稲田大学西早稲田キャンパス22号館2階203教室

テーマ:日本の恐竜学最前線
(世話人:平山 廉,早稲田大学国際教養学部)

午後1時〜 開会あいさつ,主旨説明
午後1時10分〜

  講演1:三枝春生(兵庫県立人と自然の博物館)
     「兵庫県丹波市の篠山層群中からの脊椎動物化石の発見」
午後2時10分〜

  講演2:平山 廉(早稲田大学)
     「巨大恐竜・竜脚類の古生態を類推する」
午後3時10分〜3時25分 休 憩
午後3時25分〜

  講演3:鈴木 茂(林原自然科学博物館)
     「林原自然科学博物館 モンゴル共同調査の15年とその成果」
午後4時25分〜

  講演4:小林快次(北海道大学)
     「『ダチョウ型恐竜』オルニトミムス類の進化と生態復元」
午後5時25分〜 全体討論
午後6時 終 了





*講演会終了後懇親会を予定しています.(3ページの連絡先に予約をしてください.)


第128回化石研究会例会の内容紹介
「テーマ:日本の恐竜学最前線」

講演1:三枝春生(兵庫県立人と自然の博物館)
「兵庫県丹波市の篠山層群から脊椎動物化石の発見」
 2006年8月に兵庫県丹波市の篠山層群より発見され,2007年2〜3月に発掘された脊椎動物化石について,現在判明していることについて述べる.ほぼ関節状態の竜脚類の尾椎および血道弓,脳函の破片,獣脚類および鳥脚類の脱落歯が確認されている.このほか,恐竜以外の両生爬虫類化石が発見されたがまだ未同定である.

講演2:平山 廉(早稲田大学)
「巨大恐竜・竜脚類の古生態を類推する」
 史上最大の陸生動物でもある竜脚類の古生態については,まだ多くの謎が残されている.特に,足跡から推定される重心の位置は,竜脚類のボディプランが他のいかなる四足動物とも異なる特殊な構造であったことを示唆している.竜脚類の研究は,古生物の生態復元にあたって,安易に現生の動物を当てはめるべきでないという好例であるかも知れない.

講演3:鈴木 茂(林原自然科学博物館)
 「林原自然科学博物館 モンゴル共同調査の15年とその成果」
 林原自然科学博物館とモンゴル科学アカデミー古生物研究センターとの古生物学共同調査はゴビ砂漠の白亜系を中心に1993年から継続しておこなわれて設であるダイノソアファクトリー(2002-2006)で一般に公開した.今回の 講演では15年間の共同調査の内容と成果を紹介する.

講演4:小林快次(北海道大学)
「『ダチョウ型恐竜』オルニトミムス類の進化と生態復元」
 外見がダチョウに似ており,恐竜の中で最も走るのが速かったと 考えられているオルニトミムス類.白亜紀に繁栄した恐竜で,その骨格化石がアジアと北米から多数発見されている.世界各地から発見されて いるオルニトミムス類の紹介を通して,この恐竜の進化過程と生活様式について述べる.


*早稲田大学の西早稲田キャンパスへのアクセス情報は早稲田大学ホームページを参照してください.
22号館は地図上の「早稲田大学総合学術情報センター」(国際会議場と中央図書館)の道をはさんで正面の建物です.当日は1階正面玄関が閉鎖されていますので,玄関左手にある地下1階の出入り口を通って会場にお越しください.

*懇親会は会場の予約の都合上,10月31日までに平山さん(renhrym@ab.mbn.or.jp,FAX 03-5336-8488)に参加の意向を伝えてください.

*運営委員会を11時00分から例会会場で行います.役員の方は昼食を持参してお集まりください.

 


シンポジウム,研究会のお知らせ

1)第10回国際生体鉱物シンポジウム

 約4年ごとに開催されている国際生体鉱物シンポジウムは,最近では2001年に日本の新潟で第8回,2005年に南米・チリで第9回が開催されました.次は2009年に中国で開かれることになっていましたが,今回予定を1年早めて来年の2008年に第10回(Biomin10)が実施されることとなりました.概要は以下の通り.

シンポジウム名称:The 10th International Symposium on Biomineralization, from centimeter to nanometer
期  間:2008年8月31日−9月4日
開催場所:中国・連雲港市Lianyungang City(江蘇省Jiangsu province)
     神州賓館Shenzhou Hotel
開催主体:清華大学材料科学系(北京)
チェアマン:崔 福斎(Cui Fuzhai)教授(清華大学材料科学系)ほか

 崔 福斎教授は2004年に北京で開催された第2回アジア地区生体鉱物シンポジウム(ABS-2)の主宰者で,その弟子でその時に事務方を務めた李 暁明(Li Xiaoming)博士は現在,北海道大学歯学部(亘理教授)に研究員として在籍中です.

 連雲港市は山東半島の付け根の南にある中国の8大港のひとつとされる港湾都市で,総人口は444万人の大都市.日本からも多くの物資が船で到着し,ここから鉄道でユーラシア大陸を縦断してヨーロッパに運ばれています.会場の神州ホテルは黄海に面する高級リゾートホテルとのことです.
 最近の中国の経済状況を反映して,参加登録費も高めであるのはいささか困ったことですが,今までの3回の日本開催に当たって中心的な役割を果たしてきた化石研会員として積極的な参加が期待されます.くわしくはホームページhttp://biomin10.mse.tsinghua.edu.cn/index.htmlを参照してください.なお,第3回アジア地区生体鉱物シンポジウム(ABS-3)は今年11月に中国・廈門で開催されることになっており,日本からは約10名が参加します. (神谷英利)

2)第2回バイオミネラリゼーションワークショップ

 世話人の長澤寛道氏(東京大学大学院農学生命科学研究科)より以下のお知らせが届きました.
 昨年に引き続き,本年12月1日(土)に東大弥生講堂においてバイオミネラリゼーショ ンワークショップを開催することになりました.多数の皆様の参加とポスター発表を行っていただくようお願いいたします.締切 は10月31日です.発表しない方も参加される方はあらかじめ登録してください.メールの返信でお願いします.詳しい内容は下記をご覧ください.
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/biomineral/workshop/newpage2.html
                              (三島弘幸)

3)第3回アジア地区生鉱物シンポジウム

 中国,福建省 の廈門(日本ではアモイ,中国読みはシァメン Xiamen)にある廈門大学で2007年11月に開催されます.主宰は第2回に参加した廈門大学の馮祖?(Peter Z.Feng)教授.
期日等は以下の通りです.
  2007年11月21日(レジストレーション)〜23日(討論会)
  24日〜26日(見学旅行)
詳細は以下の集会のHPを参照.
http://med.xmu.edu.cn/ASB3/EPost-symposiumfieldtrip.htm
                              (三島弘幸)



第34回石灰化組織ヨーロッパシンポジウム
34th European Symposium on Calcified Tissues (ECTS)に参加して

三島弘幸,筧光夫

 今年の5月6日?9日にかけて,デンマークのコペンハーゲンにて34回目の上記シンポジウムが開催され,私と筧会員が参加し,ポスター発表をしました.このシンポジウムの概要を紹介させていただきます.このシンポジウムは1963年にオックスフォードで第1回が開催され,その後すこし中断されたこともあるが,ほぼ毎年ヨーロッパの各地で開催されている.

 今年は,コペンハーゲン市内のCopenhagen Congress Centerにて行われた.5日の前日には,サテライトシンポジウムが開催され,夜に開会式が行われた.6日から9日までは,朝8時から夜19時30分まで,シンポジウム,ワークショップ,口演やポスター発表が行われており,かなり厳しい日程である.参加者は,ヨーロッパの各国の研究者はもちろん,北米やアジアからも参加しており,のべ人数で3300人という参加者とのことである.

 参加者の中では,医学系,特に臨床医学に携わる研究者が多かった.演題は500題以上であった.石灰化組織の研究の発表が中心であるが,主なものは,骨に関する研究であった.最近の傾向として,骨の疾病,特に骨粗鬆症のメカニズムに関する分子生物学的研究やその治療方法に関する話題が多く発表されていた.この発表の抄録はCalcified Tissue International, Vol. 80 (Supple.1), 2007に掲載されている.

 来年は,Barcelona, Spainで5月24日から28日間の日程で開催される予定である.詳細はhttp://www.ectsoc.org/をご覧ください.



本の紹介

 「解剖学用語」改訂版13版 
 日本解剖学会監修,解剖学会用語委員会編集,513頁,医学書院,3600円 2007年3月発行

 本書は,以前発行されていたものと大きく異なる点は2点ある.一つは,用語が日本語,ラテン語,英語を併記してある点である.もう一つは,組織用語と発生用語は含まれていない点である.発生学と組織学において,最近急速に発展しており,それに伴い,用語の定義が変化していることも一因であるが,12版で採用された組織用語や発生用語が日本であまり採用されなかったことも一因ということである.

 この点が残念である.本書の構成は一般用語,人体についての用語,骨学,関節学・靱帯学,筋学,内臓学,脈管学,神経系,感覚器に分けられている.索引は,日本語,ラテン語-日本語,英語-日本語の3種がある.ラテン語や英語に関しては,1998年の国際解剖学会議IFAAを尊重して,編集されている.用語も時代に呼応し,変化している.解剖学の最近の情勢に興味がある方にお薦めする.(三島弘幸)



各地の博物館特別展

■三笠市立博物館 
 特別展「化石を見つけよう!〜種類・発見・調べ方〜」 7/14〜10/14

■岩手県立博物館
 北東北三県共同展「北東北自然史博物館-大地と生きものふしぎ旅行」 9/22〜11/11
 北東北の地質と生物を過去から現在まで豊富な資料で紹介.

■産業技術総合研究所 地質標本館「デスモスチルス歌登標本−世界一の全身化石発見から30年−」 9/26〜12/2月曜日休館(月曜が休日の場合は開館し,翌日休館)ただし9月29日(土)・10月7日(日)は臨時休館
 世界一といえる「デスモスチルス」の全身化石が,北海道歌登(うたのぼり)町(現 枝幸町)で発見されてから今秋で30年.今回,この標本をはじめて公開するとともに,謎の多いデスモスチルスの姿を復元した研究の成果を紹介します.10月14日(日)13:30〜14:30には,犬塚則久氏による『謎の絶滅哺乳類 デスモスチルスの復元』の普及講演会が行われます.

■神奈川県立生命の星・地球博物館
 「ナウマンゾウがいた!〜温暖期の神奈川〜」 7/21〜11/4 (詳細は後述)

■月光天文台(静岡県函南町) 
 「イチョウの葉の化石展」 9/15〜12/25

■八尾化石資料館海韻館
 「生命のシンフォニー〜アンモナイト登場そして絶滅〜」 7/15〜9/30

■中津川市鉱物博物館
 「石に聞こう!20億年のあゆみ−岐阜県の石」 7/21〜10/28
 日本最古の石や化石から世界で最も新しい花崗岩まで,岐阜県の石をわかりやすく紹介

■滋賀県立琵琶湖博物館
 「琵琶湖のコイ・フナの物語−東アジアの中の湖と人」 7/14〜11/25
 コイやフナの進化や人々の生活との関わりを紹介する企画展示

■大阪市立自然史博物館
 「世界最大の翼竜展〜恐竜時代の空の支配者〜」 9/15〜11/25
                       (小西省吾,犬塚則久)

神奈川県立生命の星・地球博物館特別展
「ナウマンゾウがいた!〜温暖期の神奈川〜」

 今回の特別展では、大きく2つの点を目的としました。
 現在の藤沢市渡内1丁目、発見当時は藤沢市渡内天岳院下(以下、天岳院)から産出したナウマンゾウ化石を紹介することが目的の1つです。藤沢市天岳院は、今は閑静な住宅街です。そんな住宅街ができる以前、1頭のナウマンゾウの化石が発見されました。肩まで約2.5mの高さを持つ大きなナウマンゾウであることがわかりました。ナウマンゾウは、日本ではもっとも数多く発見されているゾウの化石で、県内では横浜市、川崎市、横須賀市、平塚市などからも発見されています。

 この標本は、同一個体ですが1975年に発見・発掘され(高橋・野苅家, 1980)、さらに1980年にも発掘された(長谷川ほか, 1980)標本です。これまで、2回の発掘で採集された実物標本が展示されることはありませんでしたが、今回初めて展示しました。ナウマンゾウの復元骨格レプリカとしては、これまでにいくつかの博物館で展示されてきています。

 しかし、ゾウの化石を研究している人たちには天岳院標本と呼ばれてよく知られていますが、発見から30年以上たち、産出地点も当時の様子はありません。藤沢市在住の人たちもナウマンゾウの化石が産出したことを知っている人は数少ないのが現状です。そのような状況のため、少しでも多くの人に神奈川県内からこのナウマンゾウの化石が産出したことを知ってもらうために特別展を企画しました。

 もう1つの目的は、天岳院のナウマンゾウが生きていた当時の様子を紹介することです。このナウマンゾウが生息していた時代は、地球規模で温暖化が始まる頃でした。天岳院のナウマンゾウが発見された地層は下末吉層で、MIS5のはじまりの時期(約13万年前)にあたります。そこで当時の古地理を復元し、海水面が上昇したことで神奈川県内では藤沢市はもちろんのこと、川崎市、横浜市、横須賀市、鎌倉市、茅ヶ崎市,平塚市などの沿岸地域、内陸は厚木市、大和市、海老名市、綾瀬市、あたりまで海が入り込んで、海面下に没していたことを紹介しています。また、産出した貝化石から当時の海が暖かかったこと、

 貝化石相から産出地の古環境を紹介しています。

【主な展示】ナウマンゾウの実物標本(藤沢市渡内天岳院産)/ナウマンゾウの話/天岳院のナウマンゾウ/ナウマンゾウと背比べ/ゾウの進化の話/ゾウの体の話/温暖期の神奈川/下末吉期の話/第四紀の話                   (樽 創)




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