No.101 化石研ニュース No.101 2008年2月10日発行 編集・発行:化石研究会事務局 〒525-0001 滋賀県草津市下物町1091番地 滋賀県立琵琶湖博物館 地学研究室内 TEL. 077-568-4828 FAX. 077-568-4850 http://www.kaseki.jp |
第26回総会・学術大会のご案内と 下記のとおり第26回(通算129回)総会・学術大会を開催いたします.今回は,足跡化石や生痕化石についての ■日時:2008年5月31日(土)・6月1日(日) ■会場:滋賀県立琵琶湖博物館・セミナー室 ■内容:シンポジウム・一般講演 一般講演の発表時間は,1題15〜20分の予定です.
【講演演題の申込み】 締切り:3月31日(月)(必着) 申込み方法:郵送あるいはメールで,講演者名,演題をお知らせください. 【講演要旨の締切り】 4月30日(木)(必着) 演題,発表者(所属),要旨をA41枚でおさまるようにして, 【送り先】 〒525 - 0001 化石研究会創立50周年に向けて 会長 神谷英利
化石研究会が設立されたのは1959年11月のことで,来年で50周年を迎える.私はその年に高校へ入学したばかりで,もちろんそのことを直接知る由もないが,その後大学・大学院で地質学・古生物学への道を進むことになって化石研に入会し,その歴史についても学ぶことが出来た(地学団体研究会著,科学運動,85−91,1966,築地書館;同著,みんなで科学を,34−37,1978,大月書店). 1945年の敗戦後,日本のあらゆる分野で大きな変革が進んだが,研究の世界でもさまざまな改革が行われた.地質学の分野では1947年に設立された地学団体研究会(地団研)の若手研究者を中心として学会や大学の民主化運動が進められ,戦前までの古い体制が大きく改善された.化石研の創立はその10年あまり後のことである.前出の「科学運動」は,「生物学は物理・化学の手段や方法を取り入れて------急速に発展しつつある.いっぽう,日本の古生物学の研究者の中には,化石の形態の記載や分類が第一で,---- 進化の要因については論じることが出来ない,といった泣き言を言う学者もいたほどである.---- しかも,地質学会から独立した古生物学会は,民主化が波及するのをおそれてか,1958年には会則を変更して,一部のボス教授の思いのままに運営できる学会へとかわっていった.---- 古生物学会の革新は,研究面,運営面からも,ほとんど不可能になったとみるべきであろう」と述べている. このような情勢のもと,1959年5月の地団研第13回総会で行われた進化論のシンポジウムをきっかけとして,新しい古生物学を目指す研究者が「石灰化」のテーマのもとに集まって,同年11月に設立した新しい研究組織が化石研究会である.古生物学だけでなく,歯学,水産学,生化学などの分野の研究者も参加して,(1)古生態学,(2)化石の微細構造,(3)古生物学的進化論の3つのテーマを活動の柱として活動を開始した.研究の早急なレベルアップを目指す立場から,趣意書には会の目的は研究であり,「普及活動をはじめ,研究以外の活動はおこないません」と明記してある. その以降,決して良いとは言えない条件にもかかわらず,多くの会員の努力によって研究はめざましく進展した.とくに石灰化に関わる硬組織の微細構造の分野では化石に限らず現生も含めて,世界をリードする研究成果も数多く公表された.私が入会した頃はまさにその時期であり,大変な刺激を受けると同時に将来への大きな展望を抱いたものである.1977年には第3回国際生体鉱物研究集会 The 3rd International Symposium on Biomineraliza tion(賢島シンポジウム)を日本で開催するまでになり,若い院生たちは自分たちの研究成果を世界各国からの参加者に直接ぶつける機会を得て,集会の準備をしながら,発表の英文原稿の修正に追われた.このような国際的な取り組みは化石研が率先して取り組んできたところであり,1990年には第6回(小田原),2001年には第8回(新潟)の国際生体鉱物研究集会と,今まで9回の国際集会のうち3回を日本で開催する上での原動力となってきた. 発足から半世紀,日本をめぐる社会情勢は大きく様変わりした.社会の変化はその善し悪しに関係なく,研究の世界にもじかに跳ね返って来る.かつて化石研の研究の拠点となった国立大学の理学系の研究室はほとんどなく,今は歯学系などの私立大と各地の公立博物館が重要な研究拠点となっている.私が在籍していた大学の例では,恐竜をはじめとする大型動物の化石に関心を持つ学生は多く,全国のいろいろな大学から院生が集まるが,微細構造に興味を持つ学生はまれである.その微細構造の研究も日本では以前よりはだいぶ広く一般的に行われるようになってきたが,これは今までの化石研の活動の結果と言って良いだろう.また創立時とは違い,今では多くの会員が古生物学会の会員でもある. このような経過・歴史の上に立って化石研は来年創立50周年を迎えようとしている.化石研が更に50年続くかどうかは判らないが,まもなく50年の節目を迎えることは事実である.運営委員会では来年度に創立50周年を記念する行事を行うことを決め,その準備に取りかかっているが,その内容についてはこれから多くの会員諸氏にご意見を出していただくことが必要である. この機会に,先達の会員諸氏にはあらためて自分と化石研,さらにそこで進めてきた研究について,当時から現在までを総括していただきたいし,若い会員の方には化石研究会とは何か,と言うことについて理解を深め,自分と自分の研究を化石研にどのように位置づけるのか,を考えていただいて,この先の化石研のありようについて積極的な提言していただくようお願い申し上げる.2008年1月) 第128回 化石研究会例会に参加して 2007年11月11日(日),第128回化石研究会例会が早稲田大学西早稲田キャンパスを会場にして行われた.今例会では「恐竜学の最前線」と題したテーマのもと,4名の方々の話題提供がありシンポジウム形式で行われた. 午後1時からの開会であったが,開会前から会場はいつも以上ににぎわいをみせていた.恐竜ブームの昨今を象徴しているのか,恐竜が持つ魅力,恐竜がもつ底知れぬパワーの表れなのだろう.神谷会長の挨拶が始まる頃には80名を越える来場者で会場がはちきれんばかりで,そこに集う全員が一心に演者のお話に耳を傾けていたのは印象的であった. シンポジウムでの4つの話題は以下の通りであった.講演1は,三枝春夫氏(兵庫県立人と自然の博物館)により,兵庫県篠山層群から昨年発見,発掘された脊椎動物化石についての報告があった.発掘の経緯ならびに発見されている数々の骨の形状や特徴,そしてその復元モデルなど今後の新しい発見に期待が高まる内容であった.完全な種の同定や復元にはまだまだ多くの情報が必要とのことであり,そのための二次発掘が進められている非常にホットな話題であった.引続いての講演2は,平山廉氏(早稲田大学)による竜脚類の古生態についてで,その生態には解明できないことがまだまだあることと,現状の復元とその問題点についてなどモデルを使い分かりやすく説明していただき興味深いものであった.また講演3は,鈴木茂氏(林原自然科学博物館)によるモンゴル共同調査15年の歴史と成果についての内容で,林原自然科学博物館のこれまでの活動と今後の展望について,研究条件など厳しくなる現状ではあるが益々夢膨らむ内容であった.最後に,小林快次氏(北海道大学)による「ダチョウ型恐竜」オルニトミムス類の進化と生態復元についてである.詳細なデータを基に様々な標本との比較検討が示され,進化の道筋を一つ一つひも解いて行く過程が分かるように解説していただき,聴いている私たちをどんどん引き込んでいく内容であった.その後,総合討論が行われ,飛び交う質問は専門的なものから一般的なものまで多岐におよびそれらの議論もホットなものとなった.今回の4講演はどれも普段ではほとんど聴くことができない内容だけに,恐竜研究の現状(最前線)を十分に知ることができたとともに,脊椎層物化石の研究手法,古生態学の研究手法を知る良い機会となった.日本においても恐竜化石が見つかる可能性を秘めている地層はまだまだ数多くある.「ぜひ私も!」と思った来場者は多いのではないだろうか.興味深い内容のシンポジウムだけに予定していた5時間は瞬く間に過ぎていった. シンポジウム終了後,近くのイタリアンレストランにて懇親会がもたれた.こちらでもシンポジウムの熱気をそのまま持ってきたかのにぎわいであった. (田中里志) 第3回アジア地区生体鉱物研究集会(ASB-3)が開かれる 2007年11月21日から23日の3日間,中国南部福建省の廈門で第3回アジア地区生体鉱物研究集会 (The 3rd Asian Symposium on Biomineralization: ASB-3) が開催された.この研究集会は,1998年に第1回が日本と中国の関係者の協議により,北京の中国科学院古脊椎動物古人類研究所で開催されたのが始まりで,その後2004年に同じく北京・清華大学で第2回が開かれた.そして,今回引き続き中国で第3回目が開催されたものである. 参加者は約90名で,83件の研究発表および特別講演があり,熱心な討論が行われた.前回同様,主宰母体が材料科学系の分野なので,参加者もその分野の研究者が多かった.反面,第1回の時には多かった生物進化の観点からの研究発表は非常に少なかった.この傾向は今後も強まりそうである.シンポジウムの終わりに次回の開催地の紹介があり,中国・浙江省の杭州にある浙江大学で行われることとなった.杭州は上海の南に位置する風光明媚な都市であり,近くの蘇州とともに日本の観光客も多いところである.また,北京・清華大学の崔 福齊 (Cui Fuzhai) 教授からは2008年秋に江蘇省連雲港市で開催予定の第10回国際生鉱物研究集会の紹介があった.くわしい報告は化石研究会誌に掲載されるので,それをご覧いただきたい. (神谷英利) 第9回国際生体鉱物シンポジウムのプロシーディングが刊行される 2005年12月に南米・チリのプーコンで開催された標記の国際研究集会の研究発表をまとめた「Biomineralization: from Paleontology to Material Science (Jose Luis Arias, Maria S.Fernandez eds., Editorial Universitaria」が2007年10月に刊行された.この研究集会は、2001年に小林巌雄会員が中心になって化石研会員の協力の下に新潟・黒川村で開かれた第8回集会に次ぐもので,そこにも参加したチリ国立大学のJose L.Arias教授の主宰により開催されたものである.534ページという大冊で,日本からの参加者の論文8編を含む55の論文が収録されている.本のサブタイトルに「from Paleontology to Material Science」とあるように,応用面も含む非常に広い分野にわたる論文集である.くわしくは神谷(kamiyahy@ybb.ne.jp")までご連絡されたい. (神谷英利) 間島信男のお勧め本の紹介
事務局だより 【 重要なお願い(再)】 化石研ニュースは100号より電子メールでも発送しております.これに関連して,前回の会誌に同封しておりますハガキに必要事項をご記入のうえ,まだ送っていない方は,お手数ですが事務局まで至急返送ください.従来どおり郵送でニュースをお受け取りになることもできますので,電子メールをお使いでない方もご心配には及びません.ご協力をお願いいたします. *PDF版ニュースをご覧になりたい方は,化石研究会のホームページhttp://www.kaseki.jp/newspdf/からダウンロードできます.こちらはカラーになっているので紙刷り版より読みやすくなっております.是非ご覧ください. ■新入会員 ■会費の納入をお願いします 編集・発行:化石研究会事務局 〒520‐0001 滋賀県草津市下物町1091番地 |