No.109

 化石研ニュース No.109
 2010年10月10日発行

 編集・発行:化石研究会事務局
 〒525-0001
 滋賀県草津市下物町1091番地
 滋賀県立琵琶湖博物館 地学研究室内
 


第134回例会のご案内

 第134回例会を開催いたします.今回は,群馬県立自然史博物館で行われている企画展「石になったものの記録」と関連するクモヒトデ,クジラ,ゾウなどの化石に関する講演が行われます.多くの方の参加をお待ちしております.  

  日時:2010年11月6日(土)
  会場:群馬県立自然史博物館 学習室・実験室(地図参照)
        群馬県富岡市上黒岩1674-1 電話:0274-60-1200 
        http://www.gmnh.pref.gunma.jp/view/servlet/MuseumTop
  内容
   ・テーマ「石になったものの記録」を読む(博物館の公開講演会として一般の方も参加) 
 ・日程 
    13:00〜13:15 開会挨拶 
    13:15〜13:20 趣旨説明 
    13:20〜15:15 講演(3題,詳細は2ページ)
    15:15〜15:30  まとめ   
    15:30〜17:00  自然史博物館見学(常設展示・第34回企画展「石になったものの記録」)
    17:00       閉会  
      *閉会後,館外(富岡市内)で懇親会が開催されます.(お申し込みは2ページをご覧ください)

プログラム■ 
 13:00〜13:15 開会挨拶
 13:15〜13:20 趣旨説明
 13:20〜15:15 講演 

 ・石田吉明
  「埋積過程および貧酸素環境におけるクモヒトデ化石のタホノミー」
  各地の海成層から産出するクモヒトデ(棘皮動物)の化石の産状や堆積物中の姿勢から明らかになる生息時の行動や堆積時の海洋環境,そしてその埋積過程に関して紹介する.
 ・木村敏之(群馬県立自然史博物館)
  「クジラ類の形態と生態戦略」
  クジラ類の進化の歴史を概観すると,各系統ではそれぞれを特徴付けるような独自の形態が獲得され,これらの多くは各系統での生態戦略と密接に関連している.本発表ではクジラ類の進化を概観し,近年の知見とともに彼らの生態戦略の進化の歴史についてレビューを行う.
 ・北川博道(京都大学大学院)
  「島嶼環境へ進出した長鼻類化石の進化と絶滅」
  ファルコナーゾウに代表される,地中海等に見られるドワーフゾウの紹介(そもそも矮小化ということがあるということの紹介)と,日本のナウマンゾウの消滅年代に関する再検討からわかってきた,ナウマンゾウ最後期の生物地理について講演する.

 15:15〜15:30 まとめ
 15:30〜17:00 自然史博物館見学(常設展示・第34回企画展「石になったものの記録」)
 17:00      閉会

 懇親会
 閉会後、富岡市内(上信電鉄・上州富岡駅そばで検討中)にて懇親会を開催します.
  参加希望の方は、群馬自然史博物館の高桑さん(連絡先下記)まで10月30日までにご連絡ください.
     連絡先 E-mail:BXJ04105@nifty.ne.jp
         FAX: 0274-60-1250(博物館), TEL: 0274-60-1200(博物館)

運営委員会
 6日の午前10時30分より運営委員会を行います.運営委員,事務局員などの役員の皆さまはお集まりください.

○交通アクセス
電車マップ

 ●上信電鉄 上州富岡駅 タクシー15分,無料レンタル自転車あり
         上州七日市駅 徒歩25分
 ●JR 磯部駅 タクシー15分,安中市シャトルバス15分 「もみじ平総合運動公園」下車1分(1日5往復運行)
 ●自家用車 上信越自動車道「富岡IC」から国道254号線を経由して約7km,
         上信越自動車道「下仁田IC」から国道254号線を経由して約7km
  *詳細は,群馬自然史博物館のアクセス方法(http://www.gmnh.pref.gunma.jp/about/access/)をご覧ください.

第28回総会・学術大会報告

 5月29日,30日に新潟市にある日本歯科大学新潟生命歯学部で第28回総会・学術大会が開催された.開催校は,海に面するのどかな場所にある.当日は,天候にも恵まれ,ポスター会場となった教室(アイヴィホール)前の全面ガラス貼りのロビーには,暑く感じるほどの日差しが差し込んでいた.
 29日は,シンポジウム「バイオロジカル ミネラル」が開催され,物質・材料研究機構の中沢弘基氏の招待講演を含む5題の講演が行われた.このシンポジウムでは,化石と現生そして脊椎動物から無脊椎動物と幅広い生体鉱物の微細構造の話題が話され,化石研らしいシンポジウムとなった.
 30日には一般発表が行われ,口頭での講演が11題,ポスターでの講演が6題行と盛況であった.また,この日には,日本歯科大学の奈良貴史氏の「ネアンデルタール人類の誕生と消滅」という特別講演があり,わかりやすく話していただいたおかけでネアンデルタール人の研究の到達点と課題がよく理解できた.
 今回の参加者は40名で,化石研以外の参加者も多く,充実した総会・学術大会を開催することができた.これもひとえに開催を引き受けていただいた日本歯科大新潟生命歯学部の会員の方々,そしてその方々と一体となって準備や運営を行っていただいた新潟の方々のお蔭である.この場を借りて,感謝とお礼を申し上げる次第である.

(事務局)

 ポスター会場の様子

●展示会のお知らせ●

恐竜博物館開館10周年記念特別展「アジア恐竜時代の幕開け ─ 巨大恐竜の進化 ─ 」 恐竜博物館では開館 10 周年を記念した特別展を開催しています。本展では、中国やスウェーデン、タイの研究機関が所蔵する貴重な標本を展示し、竜脚類を中心としたアジアの恐竜進化について紹介しています。日本初公開となる、学術的・歴史的にも貴重な標本を多数展示しています。
 展示の目玉の一つとなっている「エウヘロプス」(全身骨格:複製、歯:実物)は中国で初めて記載された竜脚類で、20世紀初頭に発見されて以来、スウェーデンのウプサラ大学付属進化博物館で展示されていました。スウェーデン国外で展示されるのは今回が初めてで、一世紀ぶりにアジアに里帰りしたことになります。このほか、アジアを代表する竜脚類「マメンチサウルス」の実物頭骨化石、古竜脚類「ルーフェンゴサウルス」の幼体化石など見逃せない標本ばかりです。また、特別展に関連して、ラオス産の竜脚類タンバヨサウルス(複製)もエントランスホールで展示を始めました。アジアの貴重な恐竜が一堂に会したこの機会に、是非お越し下さい。
 エウヘロプス・ツダンスキィ


  

お役立ち情報

至近距離も見える双眼鏡
 通常の双眼鏡は近くを見るのに2mくらいが限界である。一方、実体顕微鏡はワーキングディスタンスが10cmらいだし、双眼ルーペでも20-30cmくらいである。この両者の中間を埋める双眼鏡がある。PENTAX Papilio 6.5×21と同8.5×21で、アマゾンの通販価格は前者が13,410円、後者が11,800円である。
 この双眼鏡は普通の双眼鏡と同じく無限まで見ることができる一方、60cmまで接近して見ることができる。近接して見ると、裸眼で見るよりはるかに大きく見える。一番の用途は博物館の展示物の観察によい。暗い照明下でも鮮明に大きく見えるのはすごい。恐竜の歯のキズだって実体顕微鏡で見るように見える。むろん美術鑑賞にも、繊細な筆使いまでが見て取れる。
 野外でも重宝する。遠方の地層から、発掘した化石の詳細の観察までができるからである。面白いのは虫の観察で、窓際につくったアシナガバチの巣の観察に欠かせなかった。アオムシの肉団子を運んできては食べやすいように細分し、幼虫に口渡しで与える様子はじつにほほえましい。草むらの虫も別世界に見えてくる。
 この双眼鏡を紹介してくださったのは、北海道・足寄動物化石博物館の澤村 寛氏である。なお、2つの機種のうち6.5×21 のほうが使いやすいと思う。

(小寺春人)


間島信男のお勧め本の紹介

■教科書・事典類(大学生以上向け)

1)『古生物学事典 第2版』日本古生物学会[編].朝倉書店.(2010年6月)¥15,000円+税.
 1991年に初版が出版された古生物学事典で,日本古生物学会創立75周年記念事業の一環として刊行された.131名におよぶ古生物研究者が執筆に当たっており,改訂に当たり近年の古生物科学の成果をとりいれた内容となっている.「中項目主義」の「読む事典」をめざしたというコンセプトはB5判ハードカバーという本の装丁にもいかんなく発揮されている.(★★★

■一般普及書

2)『進化の存在証明』 リチャード・ドーキンス[著],垂水雄二[訳].早川書房.637p.(2009年11月)¥2,800円+税.
 生物の進化は実際に起こった事実だということを証拠だてるのが,本書のテーマである.生物の体は遺伝子が遺伝子を伝えるための乗り物にすぎないといったユニークな進化論を展開していた著者が,進化要因論ではなく,進化の事実を証明するための本を書かなければいけなくなった社会状況に,むしろ暗澹たるものを感じる.(★★) 

3)『ホルツ博士の最新恐竜事典』 トーマス・R・ホルツ Jr.[著],ルイス・V・レイ[イラスト],小畠郁生[監訳],池田比佐子・加藤珪・舟木嘉浩・舟木秋子[訳].朝倉書店.4671p.(2010年2月)¥12,000円+税
 この夏も書店にはたくさんの恐竜本が並んだが,極めつけの1冊を紹介する.事典というより一般向けの恐竜学の教科書というほうが適切である.恐竜類についての最新の知識を身につけるには良い本である.生体復元図が多いが,実物の化石の写真がまったく無い点が残念.値段も極めつけだ.(★★

4)『進化論の時代−ウォーレス=ダーウィン往復書簡集』 新妻昭夫[著].みすず書房.495+29p.(2010年3月)¥6,800円+税.
 自然選択説による進化理論をうちたてた両者の約150通におよぶ往復書簡の翻訳および著者による解説からなる.各書簡に詳しい注釈がついている.巻末の人名解説,参考文献も充実している.通読は困難だが,資料的価値のきわめて高い労作である.(★★★) 

5)『丹波竜−太古から未来へ』 兵庫県立人と自然の博物館[監修],神戸新聞総合出版センター[編].神戸新聞総合出版センター.103p.(2010年3月)¥1,333円+税.
 兵庫県丹波市で発見された竜脚類の第3次発掘までの成果を中心に篠山層群から発見された中生代哺乳類化石やカエル化石まで,発掘ルポや解説が一般むけにわかりやすく執筆されている.カラー写真も豊富.“丹波竜”について知りたい人は是非どうぞ.(★★

6)『植物化石−5億年の記憶』 塚腰 実[監修],INAX出版.72p.(2010年3月)¥1,500円+税.
 INAX ギャラリーで開催されている同名の特別展のための図録で,植物化石標本の美しいカラー写真とともに植物の進化史が簡潔にまとめられている.西田治文氏の寄稿もある.最後は,メタセコイアの発見で有名な古植物学者の三木茂の研究や人となりを大阪自然史博物館の塚腰実氏が紹介している.小冊子ながら貴重な1冊である.なお,東京会場での展示会はもう終わったが,大阪会場(INAXギャラリー大阪)は11/18まで開催.(★★★

7)『96%の大絶滅−地球史におきた環境大変動』 丸岡照幸[著].技術評論社.215p.(2010年4月)¥1,580円+税.
 表題の96%の大絶滅とは,古生代末の大量絶滅のことだが,白亜紀末の大量絶滅の方に多くのページが割かれている.地球化学の立場から大量絶滅の研究を紹介しているのが本書の特徴であり,隕石衝突説について丁寧に解説している.(★★

8)『神父と頭蓋骨』 アミール・D・アクゼル[著],林 大[訳].早川書房.326p.(2010年6月)¥2200円+税.
 北京原人や中国の第四紀哺乳類化石の研究で名高いテイヤール・ド・シャルダンの本格的な伝記.もちろん神父とはシャルダン,頭蓋骨とは北京原人の頭蓋のことである.著者は統計学者・科学ノンフィクション作家で,『フーコーの振り子』など多くの著書が翻訳されている.(★★

9)『巨大絶滅動物 マチカネワニ化石−恐竜時代を生き延びた日本のワニたち』小林快次・江口太郎[著].大阪大学総合学術博物館叢書5.94p.(2010年6月)¥2,400円+税.
 マチカネワニは 1964 年大阪大学構内で発見された全長約7mないしそれ以上もある巨大ワニである.著者の一人小林は,マチカネワニの英文再記載論文の筆頭共著者である.本書は,このマチカネワニがどんなワニなのか一般の人にも広く知ってもらおうと書かれた普及書である.ワニの特徴や分類から始まり,化石の各骨の特徴が述べられ,日本の主なワニ化石ついても紹介されている.実物標本を実際に詳しく研究した人の解説なのでおもしろく説得力がある.(★★★

事務局だより

2010年度会費の納入お済みでない方はお願いします
   年会費 4000円 (学生2500円)
   郵便振替 00910-5-247262 「化石研究会」
   * 3年間会費未納の会員は,除籍となりますのでご注意ください.


編集・発行:化石研究会事務局  〒525‐0001 滋賀県草津市下物町1091

  滋賀県立琵琶湖博物館地学研究室   TEL:077-568-4828; FAX:077-568-4850
  e-mail: takahasi@lbm.go.jp (lbmはLBMの小文字)
 ホームページhttp://wwwsoc.nii.ac.jp/frsj/index.htm
 


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