No.110

 化石研ニュース No.110
 2011年2月25日発行

 編集・発行:化石研究会事務局
 〒525-0001
 滋賀県草津市下物町1091番地
 滋賀県立琵琶湖博物館 地学研究室内
 


第29回総会・学術大会のご案内
 第29回化石研総会・学術大会(通算135回)は下記の予定で行われます.今回は,植物化石に関する講演会を企画しました.ふるってご参加ください.

期日:2011年6月4日(土),5日(日)
場所:京都教育大学(京都市伏見区深草)
プログラム(予定です.確定版は次の化石研ニュースに掲載します.)

 4日(土)
  12:00-13:30 運営委員会(役員のみ)
  14:00-17:30 講演会「植物化石研究と植物系統学の進展(仮)」
       世話人:山川千代美,松本みどり
       講演者:西田治文(中央大)・永益英敏(京大博物館)・
            楡井 尊(埼玉県立自然の博物館)
  18:00-   懇親会 

 5日(日)
  10:00-12:00 一般講演
            ポスター発表・展示発表 コアタイム
  13:00-15:00 総会議事
          一般講演

  (*申込方法は3ページをご覧ください.)


2011年度を迎えるにあたって

会長 神谷英利

 2011年も3カ月ほどが経ちました。会員の皆様には研究、教育をはじめ、多方面でご活躍のことと存じます。化石研究会は2008年に創設50周年を迎え、2009年に記念総会を開催しました。今までの研究活動の総括を中心とした学術講演会やいろいろな行事が行われ、多数の会員の参加をいただき、実りのある記念総会となりました。
 それから早くも1年半が経過しました。学術講演会のまとめはすでに化石研会誌の特集号として刊行されました。現在は「化石に関する一般向け普及書」の出版が、記念行事の最後を飾るものとして進行中です。この出版に当たっても、多くの会員からのご協力をいただいており、多少予定よりは遅れる見込みですが、遅くない時期に刊行される見通しとなっております。
  今年は7月にオーストラリアのサンシャインコーストで恒例の国際バイオミネラリゼイション・シンポジウム11th International Symposium on Biomineralization が開催されます(注)。ご承知のように、この国際会議はほぼ4年ごとに開催されて来ましたが、日本でもすでに3回開催されております。いずれの会においても化石研究会の会員が中心的な役割を果たし、この分野における研究の国際交流に大きな役割を果たして来ました。今年の11回集会にも多くの会員ご参加が期待されます。
  このような微細構造の分野に限らず、いわゆる伝統的な古生物学の分野も含めて、化石研は今まで多くの成果を上げてきましたが、現状を見るといろいろな問題があります。会員の高齢化が進む一方で若い会員の入会が少なく、このままでは活発な会の研究活動が出来なくなるばかりか、組織運営にも支障が出かねない状況でもあります。
 このような事態に鑑み、昨年11月に開かれた運営委員会では、会の組織問題について早急に検討する必要があるとして、「組織問題検討ワーキンググループ」を設置することが決められました。今後、出来る限り早い時期に一定のまとめを出すために活動を進め、それをもとに多くの会員のご意見をお願いする事にしたい、と考えております。
  そのような状況ですので、会員の皆様にもぜひよろしくご協力をお願い申し上げます。今年の例会や総会・学術講演会にもぜひ多くの会員のご出席を期待しております。

(注)http://www.usc.edu.au/University/AcademicFaculties/Science/About/biomin11-conference.htm


一般講演,ポスター発表,展示発表を募集

第29回総会・学術大会の一般講演,ポスター発表,展示発表を募集します.次の要領で申し込んでください.

<一般講演、ポスター発表をご希望の方>
[演題申し込み] 
締め切り:4月20日
方法:郵送あるいはメールで,講演者名,演題,口演・ポスターの別をお知らせください.パワーポイントでの発表者は,Mac,Windowsの種別やパワーポイントの形式をお知らせください.
[講演要旨]
締め切り:5月15日
方法:演題,発表者(所属),要旨をA4版用紙1枚に収まるように記入し(要旨本文は約600字が目安),メール添付で送付,あるいは完成原稿を郵送してください.
  • 一般口演は10〜15分,ポスターボードは縦180cm,幅90cmを予定しています.展示発表を希望する方:抄録は任意ですが,表題,展示品の種類,発表者(所属)と使用希望設備(机,ポスター板など)の有無をお知らせください.
     
  • 一般講演、ポスター発表、展示発表などの申し込み,講演要旨の送り先は下記のとおりです.
【申込み・連絡先】
 〒525-0001 滋賀県草津市下物町1091 滋賀県立琵琶湖博物館 高橋啓一 宛て
 TEL: 077-568-4828, FAX: 077-568-4850(地学研究室)
 E-mail:takahasi@lbm.go.jp

間島信男のお勧め本の紹介

<教科書・教科書的な本(大学生以上向け)>

1)『動物の系統分類と進化』藤田敏彦[著],太田次郎・赤坂甲治・浅島 誠・長田敏行[編集]裳華房,194p.(2010年 4月)¥2,500円+税.
 新・生命科学シリーズと題されたシリーズ本の第1巻にあたる.分類学の基本,学名と標本の役割,国際動物命名規約,系統推定の方法,動物の系統と進化がわかりやすく解説され,最後に各動物門の特徴と系統関係がまとめられている.現生動物の立場から,分類学・系統学を学ぶには格好の入門用テキストである.(★★

2)『講座 日本の考古学1 旧石器時代(上巻)』稲田孝司・佐藤博之[編]青木書店,624p.(2010年4月)¥7,000円+税.
 本来,考古学徒向けのテキストであるが,第1章『第四紀更新世の自然と人間』は更新世の自然環境史を知る総説としてすぐれているので,紹介するしだいである.特に4節『更新世の植生と環境』(杉山真二),5節『更新世の哺乳類』(河村善也)は第四紀古生物学に関心のあるものにとって重宝な内容である. (★★

3)『新しい分子進化学入門』宮田 隆[編],講談社,196p.(2010年8月)¥3,200円+税.
 12名の分担執筆によるテキストで,前半は分子進化学の基礎や解析技法について数式も用いて詳しく述べられている.後半は,読み物的な内容も多く,真核生物の成立や多細胞動物の起源,カメの系統関係,真獣類の進化,現代人の起源など古生物学と関係の深い内容がそろっている.最近,分子進化学と古生物学の融合という言葉を聞くが,分子進化学の概要と最近の成果を知るうえでよいテキストといえるだろう. (★★

<専門書・論文集>

4)『第十二届中国古脊椎動物学学術年会論文集』DONG Wei[編]海洋出版社,北京.307p.(2010年9月)¥約4,900円.
 2010年9月に山東省で開催された第12回中国古脊椎動物学学術年会で発表された29論文を収める.旧石器考古学,形質人類学に関する論文が計11編,3D映像など新しい技術の紹介が2編と化石の産出報告が多かったこれまでの内容とはだいぶ様変わりしている.

<一般普及書(読みもの)>

5)『生きもの上陸大作戦−絶滅と進化の5億年』中村桂子・板橋涼子[著]PHPサイエンス・ワールド新書.150p.(2010年8月)¥860円+税.
 生物の上陸という進化史上のできごとに焦点をしぼり,植物,昆虫,脊椎動物と順を追って紹介している.生命誌研究館での展示『生きもの上陸大作戦絵巻』の図録・解説書を意図して執筆されたということだが,両名とも現生生物屋のためゲノムの話や現生生物の記述にくらべて古生物の記述が物足りない.最終章は大絶滅が進化を促進させるという基本概念のもと大量絶滅説の紹介になっていて,何が生物の上陸をうながしたのかという問題には迫っていない点は,残念である.想定読者対象は中学生〜高校生ぐらいか.(

6)『恐竜再生』ジャック・ホーナー,ジェームズ・ゴーマン[著],柴田裕之[著],真鍋 真[監修]日経ナショナルジオグラフィック社.253p.(2010年10月)¥2,400円+税.
 恐竜のクローンをつくろうという計画ではない.T・レックスの骨内に保存された赤血球化石の発見の話に始まり,後半はニワトリの遺伝子を操作して歯,機能指および長い尾を供えた恐竜(のような姿をしたニワトリ)をつくりだすという研究計画が熱っぽく語られている.ホーナーは,この実験は技術的には実現可能であり,この実験によってどのような遺伝子の変更が大進化をもたらすかというメカニズムが明らかになるという.科学哲学,生命倫理の問題や実験古生物学とは何かについていろいろと考えさせられる,示唆に富む一冊である.(★★

7)『ヒトの進化 七〇〇万年史』河合信和[著]筑摩書房,ちくま新書879.(2010年12月)¥860円+税.
 毎週のように新種の恐竜発見のニュースを目にするが,それに負けず劣らずめまぐるしい新発見の嵐が吹き荒れているのが,古人類学の分野である.この分野に造詣の深い科学ジャーナリストが文献を丁寧に読み込み,最近10年ほどの進展著しい人類化石の研究成果をあますところなく伝えている.現在,知られている人類は25種に達し,それぞれについて最新の研究成果をレビューしている.最古のサヘラントロプス,ラミダス猿人の全身骨格,人類進化の常識を覆したホモ・フロレシエンシスなどとても紹介しきれない.人類進化に関心のある人は必読の書である.あなたの知識はもう古い.(★★★

8)『進化の運命−孤独な宇宙の必然としての人間』サイモン・コンウェイ=モリス[著],遠藤一佳・更科 功[訳]講談社.724p.(2010年8月)¥2,800円+税
 本書は数々の収斂進化(ちなみにコンウェイ=モリスは収斂と平行進化は区別できないとしている)の実例をもとに,人間(知的生命体)の進化が必然であったことが述べられている.進化は偶然の産物であり科学と宗教の棲み分けによる共存が必要と説くスティーブン・J・グールドとの論争をふまえて執筆された本書には,グールドとは対照的な科学と宗教に関する考え方,人間の存在理由の根源についての深い論考がつまっている.(★★

<一般普及書(ビジュアル中心)>

9)『生物の進化大図鑑』マイケル・J. ベントン他[監修],小畠郁生[日本語版総監修]河出書房新社.512p.(2010年10月)¥9,500円+税.
 普及書における化石の紹介の仕方にはいくつかの方式があるように思う.その一つは世界中のすべての分類群を集めて、時代ごとに配列し,生命の歴史をまとめるという方式である.本書はまさにその典型である.序章では,地球の創生,プレートテクトニクス,進化理論,分類,化石の種類など,本書を理解するのに必要な内容の概説がある.第2章の「地球上の生物」では,始生代から第四紀まで時代順にその時代の主な化石とその解説が述べられている.最終章は人類の進化がまとめられている.化石標本,CGによる生態復元図がすべてカラーで美しい.全722種,3000点以上の図版で生命37億年の歴史の全貌を紹介したという宣伝文句は偽りではない.26cm×30.5cm×3.8cmという大型本で,大変重い. (★★★

10)『新版石川の化石』松浦信臣[著]北國新聞社.273p.(2009年3月)¥2,857円.
 もうひとつの方式は,本書のようにある地域から産出する化石を網羅するというスタイルである.本書は,石川県の地質,化石の概要に始まり,手取層群の植物化石から第四紀の貝化石まで県内のあらゆる化石が図示・紹介されている.付章には金沢市内にあるビル石材中の化石の案内まであるという充実ぶりである.ただ,カラー図版のページが少なく,大部分が白黒図版であること,学術論文の図版のような構成で,全体に“硬い”感じになっているのが残念である.個人的には,ゾウ,シカ類は鰭脚類といっしょにするのでなく,写真を大きくし独立して1枚の図版にしてほしかった.(★★


The evolution of the human head.
Dniel E, Lieberman著、Harvard University Press  B5,765頁、2011年
(参考価格amazon.co.jp:3,450円)

 ヒトの頭は吻がなく短い。脳は大きく歯は小さい。咽頭が拡大し舌が厚く短い。この頭が頚に垂直に載っている。動物の中でも霊長類の中でも、ヒトの頭は特異な構造と配列をしている。この本では、頭の機能である咀嚼、嚥下、感覚や脳のはたらきを統合的に見ているだけでなく、その発生成長過程から分析している。人類進化の過程で、なぜ変化したのか、いつ変化したのかを、最新の人類化石の資料からみごとに説明している。ヒトと脊椎動物の解剖学、比較解剖学、機能解剖学、進化学、発生学、系統進化学の必読の書であろう。著者は、ハーバード大学進化人類生物学教授、45歳の気鋭の人類学者である。内容は豊富で、本文だけで613頁の大著にもかかわらず安価(3,450円)なのに驚く。

(小寺春人)


【訃報】大森昌衛会員が逝去されました

 化石研究会の創設と研究活動の発展に尽力された大森昌衛(おおもりまさえ)会員が、1月3日に逝去されました。91歳でした。謹んで哀悼の意を表します。
 同会員は東京文理科大学(のちに東京教育大学、筑波大学)理学部地質学鉱物学科を卒業後、地史学、古生物学の教育・研究に従事され、東京教育大学教授を経て、筑波大学の新設と東京教育大学の廃学に伴い、麻布大学に移られ、1990年に定年退職されました。
 この間、1959年には井尻正二氏(故人)らとともに、化石研究会の創設に参加し、古生物学の新しい発展のために尽力されました。化石研究会の50年あまりにわたる研究活動の基本的な条件は同氏によって確立された、と言う事が出来ます。さらに、日本地質学会会長、日本学術会議会員を歴任され、古生物学のみならず、地質科学、日本の科学全般の発展のために貢献されました。
 一昨年6月に開催した本研究会創設50周年記念総会では、「化石研の足跡と課題」と題して、記念講演をしていただいたのは、未だ記憶に新しいところです。ここに会員の皆様にご報告し、ご冥福をお祈り申し上げます。

(会長 神谷英利)

  

「大森昌衛先生を偲ぶ会」のお知らせ

 日時;4月16日(土)
 午後(13:30−16:30の予定)
 場所;東京ガーデンパレスホテル
 (湯島「私学会館」)

 詳しい内容ついては以下にお問い合わせください.
 問い合わせ先;真野勝友 tel/fax042-546-5723

「大森昌衛先生の略歴と業績」(1979年)より



事務局だより

会誌第44巻1号の原稿募集中
 化石研会誌44巻1号の原稿を募集しています.締め切りは3月末までです.投稿予定の方は下記まで至急ご連絡ください.
 会誌編集委員会:笹川一郎
 日本歯科大学新潟生命歯学部先端研究センター・解剖学
 951-8580 新潟市中央区浜浦町1−8
 TEL: 025-267-1500, FAX: 025-267-1134(先端研)

秋の例会
 10月29日(土)に大阪市立自然史博物館で開催する予定です.是非,予定に入れておいてください.

組織問題ワーキンググループ
 化石研究会の組織的課題を解決するために,「組織問題ワーキンググループ」を作りました.ここでは,次の事務局体制を含めた今後の化石研究会の運営体制や組織問題を短期間のうちに相談します.

2011年度会費の納入をお願いします
   年会費 4000円 (学生2500円)
   郵便振替 00910-5-247262 「化石研究会」
   * 3年間会費未納の会員は,除籍となりますのでご注意ください.


編集・発行:化石研究会事務局  〒525‐0001 滋賀県草津市下物町1091

  滋賀県立琵琶湖博物館地学研究室   TEL:077-568-4828; FAX:077-568-4850
  e-mail: takahasi@lbm.go.jp (lbmはLBMの小文字)
 ホームページhttp://wwwsoc.nii.ac.jp/frsj/index.htm
 


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