化石研ニュース82
No. 81

最終更新日:2004/10/22

   
2002年8月20日


第118回 化石研例会のご案内

沖縄で11月2日・3日開催

開催日時 : 2002年11月2日(土)・3日(日)

場所 : 琉球大学理学部・那覇市西原町(世話人:琉球大学・伊佐英信会員)

内容

●特別講演2題(案):

1)与那国島の海底遺跡について    (木村政昭・琉球大学理学部)
2)サンゴの石灰化に関して        (山城秀之・名桜大学国際学部)

特別シンポジウム

現在のところ、企画検討中です。
●Excursionの候補として、下記の2つが挙げられております。

1.本部半島(沖縄本島北部)のカルスト地形
  琉大瀬底島・臨海実験所見学
  海洋博水族館(世界最大の水槽とジンベイザメ)見学、

2.港川人骨発掘地点の見学(沖縄本島南部)
  玉泉洞(日本一の鍾乳石のホールあり)
  戦跡(姫ゆりの塔など)見学

★なお、例会の詳細については、後日改めて次のニュースでご連絡します。

航空券 : 2ヶ月前から、各社の格安航空券が発売されますのでご利用されることをお勧めします。



第20回化石研究会2002年総会・学術大会の報告

 2002年7月6日?7日に大阪自然史博物館で開催された。6日には運営委員会のあと、特別講演が博物館の講堂で行われた。その内容は「貝殻のミクロの世界」という演題で小林巌雄会員が博物館の普及講演を兼ねて、講演された。博物館を訪れた一般の方も多数参加されていた。2日間で一般演題では、口演が12題、ポスター発表が3題であった。その抄録は後日会誌に掲載される。参加者は例年に比較して少なく22名であった。6日の午後には博物館の特別展の見学や収蔵庫の見学を行った。

■総会承認事項

 7月6日の総会において、以下の事項が承認された。

1. 2001年度活動報告(2001年4月1日〜3月31日)

 1)、総会 
 第19回(通算116回)化石研究会総会・学術大会、運営委員会
 期日:5月26日(土)〜27日(日)
 場所:麻布大学(世話人:佐俣哲郎会員)
 内容:シンポジウム:バイオミネラリゼーション「硬組織の微細構造と進化」演題6題、
 一般演題7題、ポスター発表2題、特別講演1題「脊椎動物のビタミンA貯蔵細胞系」、参加者40名
 40周年記念講演は2題、
 1)大森昌衛会員による「動物の骨や歯は、いつごろどのようにして出来たか」、
 2)秋山雅彦会員による「化石研究会の歴史」(26日)であった。
 26日には40周年記念祝賀会が行われた。

 2)、共催した学術集会
 (1)第8回バイオミネラリゼーション国際シンポジウム
 期日:9月25日〜28日
 場所:新潟県黒川村胎内ロイヤルパークホテル
 参加者:国外44名、国内94名計134名
 演題数:120題
 プロシーディングの刊行:2002年末をめどに東海大学出版会で発行予定(500ページ)

 (2)「掛川層群の化石シンポジウム in 掛川」が掛川市教育委員会主催で2001年10月27日に掛川市図書館で行われた(化石研究会後援)。

 3)、運営委員会
 期日:12月15日(土)
 場所:筑波大学学校教育部
 内容は化石研ニュース79号に掲載されている。

*化石研双書委員会と事務局との合同会議が2002年1月19日(土)に筑波大学学校教育部で行われる。内容は化石研ニュース79号に掲載されている。

 4)、会誌の発行 34巻 1号、2号

 双書1号「古生物学的進化論の体系」の発行

 5)、ニュ−スの発行
 77号(4月21日)、78号(8月1日)、79号(2002年1月15日)

*その他 新潟大学小林研究室で保管されていた交換雑誌のバックナンバーなどは小林巌雄会員の退官に伴い、滋賀県立琵琶湖博物館の高橋啓一会員のも
とに移行された。

2. 2002年度会員動向

 会員数240名(2002年3月31日現在)
 新入会員 0名
 逝去された会員2名

3. 今後の活動予定

 1)今後の例会
 2002年秋に沖縄の琉球大学の伊佐会員が世話人となり、117回例会が行われる予定である。

 2)来年の総会は金沢大学の田崎会員が世話人となり、春から初夏に開催される予定である。

4,会計の決算と予算(詳細は別欄を参照)

5,化石研究会ホームページ小委員会(鈴木久仁博、島本昌憲、柴正博、小幡喜一)からのこれまで半年間の討議内容の報告と提案について、議題が出された。サーバーの業者委託やホームページの内容などの提案については小委員会でたたき台を再度提案し、運営委員会で審議し、次回総会で検討する予定となった。

6,双書委員会から、今後の双書の内容について提案があった。内容的は、1)著書、2)データ集、3)論文集、4)研究の技術や方法論、5)オリジナリティーの高い総説などとし、今後委員会を中心に話し合い、2号を出版していきたいとの報告があり、了承された。またその委員会に下記の5名が推薦された。

 真野勝友、鈴木清一、白井浩子、笹川一郎、 氏家良博

7,2002年度の役員は任期2年目で非改選であり、引き続き次年度もおこなう(役員については化石研ニュースの78号を参照)。なお、事務局に小西省吾会員(ニュース編集)を追加することが承認された。

8,化石研究会の名簿の作成を今年度行う予定である。



<論文紹介>

最古の人類化石
A new hominid from the Upper Miocene of Chado, Central Africa.
Brunet, M. et al. )Nature. 418(no.6894), 145-151 (2002).

 ついに600‐700万年前にさかのぼる最古の人類化石が発見された。発見されたのは中央アフリカのチャドであり、人類誕生の地といわれた東アフリカ地溝帯から西に2千5百キロも離れている。

 この化石がhominidであることと、この時代が公認されるなら、いわゆるイーストサイドストーリーが覆されるばかりでなく、分子生物学からチンパンジーとヒトの分岐が500万年前とされてきた「定説」を根底から否定することになる。

 この化石は、Sahelanthropus tchadensis (新属新種)と命名されている。

 化石は、下顎のないほぼまるごとの頭蓋骨とP3からM3までが植立する別個体の右側下顎骨、遊離した上顎中切歯に下顎犬歯などからなる。

 hominidとした根拠は、小さくて尖頭が減った犬歯をもつこと、C-P3 complexがnon-honingであること、小臼歯・大臼歯のエナメル質の厚さが中程度(PanとArdipithecusの中間)であること、頭蓋底の大後頭孔が前方に位置していること、犬歯に歯隙がないこと、大きくて左右に連続した眼窩上隆起を持つことである。

 他方、原始的な特徴としては、脳サイズが小さいこと、三角錐形をした底後頭骨や側頭骨岩様部の方向が左右の頚動脈孔を結ぶ線に対して60度にあること(ParanthropusやHomoでは45度)があげられている。

 この化石の発見の意義は、人類の起源が単純にサバンナへの適応としては説明ができなくなったこと。そして、なにより分子生物学からヒトとチンパンジーの分岐が500万年前であったとする説を覆すばかりか、その科学性にも疑問を投げかけたことである。進化の問題は化石の証拠が絶対的な重みをもつことを、あらためて示すことになりそうである。もっとも分子生物学者は、なにくわぬ顔で数学的操作を加えたりするのかもしれない。

(小寺春人)



[化石研究の道具 No.3]

カツオブシムシ

 用途:化石の比較標本のために、現生生物の骨格標本をつくるさいに用いる。

 カツオブシムシを使って骨格標本を作る方法は、古くから知られているところだが、ここにあらためて紹介するとともに、いくつかの工夫を紹介する。

 カツオブシムシ:甲虫目Coleopteraカツオブシムシ科Dermestoideaに属し、世界では約700種、日本には20種が生息する。日常的にはその名が示すように、鰹節をはじめ乾物類や、毛皮類を食害する害虫として知られる。なかでも、成虫が10mm内外のトビカツオブシムシが骨格作成にはよく用いられる。この甲虫は、乾燥した肉を食い、うまくすると小哺乳類などでは関節の結合を残して肉だけを食ってくれる。水には弱く、虫がついたままの標本を水に入れると死んでしまう。小哺乳類やヘビや魚の繊細な骨格標本を作るには最適であり、また、大型動物の骨も、手抜きで作成するには便利な虫である。

 入手方法:夏に樹脂製の衣装ケース等を用いて、中に乾燥肉を入れておく。ケースの蓋を少し浮かせてかぶせ、肉のニオイを出して虫を引き寄せ入れるようにする。しかし、雨水が入らないように、また風で蓋が飛ばないようにしておく必要がある。中に入れておく肉は、たとえば皮と内臓を抜いたネズミや、ハトの死体をまるごと入れておいてもよい。はじめは腐敗に伴いハエがやってきて蛆が発生して大まかに肉を食うが、やがて軟組織が乾燥すると蛆の姿は消え、かわりにカツオブシムシがやってきて卵を生み、その幼虫が肉を食ってくれる。こうして捕獲したカツオブシムシは、ケースを密閉して飼いつづけることができる。ただし、この甲虫は高温を好み、少なくとも25度以上でないと活動しなくなる。

 小型動物の標本作成:カメレオンを木につかまらせたままの骨格標本を作る場合には、皮剥ぎをし内蔵を抜いたうえで、ポーズをつくって木にとまらせ、そのまま乾燥させる。これをカツオブシムシに食べさせる。虫の数にもよるが、この大きさの動物の場合は進行が非常にはやいので注意して観察する必要がある。もしも不均一に虫が食べて、一部の関節がはずれそうになったならば、瞬間接着剤をごく少量だけつけて固定しておく。全体としては、まだ肉の残っているうちに停止するのがコツである。

 このようにしてカツオブシムシに作らせた骨格は、まだ虫やその抜け殻が付着しているばかりか、糞が一面についている。それに骨そのものも茶色をしているので美観がよろしくない。中・大型の骨格ならば液浸させて漂白剤を用いて漂白することができるが、小型の骨格の場合は、液浸により骨格が分解しかねない。その場合は空中でのガス漂白が有効である。密閉した小さい容器に標本を入れ、これに過酸化水素液の入った皿を入れて、酸素ガスで漂白する。もし時間をいとわないなら、紫外線による漂白が標本にとってはいっそう安全であろう。紫外線照射の簡単な方法は、たんに日光に当てるだけでよい。

 注意:カツオブシムシは普通に生息する昆虫ではあるが、衣類や食料品の代表的な害虫であることに十分な注意を払う必要がある。



【図書案内】

Zooarchaeology (Cambridge Manuals in Archaeology)
E. J. Reitz and E. S. Wing 著 Cambridge Univ. Press出版. 1999年,
¥4792.




Prehistoric Mammals of Australia and New Gunia :
One Hundred Million Years of Evolution.

J.A.Cong著, Johns Hopkins University Press出版, 2002年,
¥3578.








Copyright(C) 化石研究会