化石研ニュース
No. 84

最終更新日:2004/10/22

   
2003年5月20日発行


第21回(通算119回)総会・学術大会のご案内

★金沢大学 2003年6月14日〜15日★

 緑の映える初夏となりましたが、会員の皆様にはご健勝のことと存じます。化石研ニュース83号でお知らせしましたように、2003年度総会と学術大会は金沢大学の会員とその関係の皆さんのご協力をいただいて、下記のように開催されます。日程・プログラムなどは以下の通りですが、北陸における初めての開催となるこの総会に多数の会員のご参加を期待します。

期 日  2003年6月14日(土)午後-15日(日)
会 場  金沢大学理学部地球学教室
     〒920-1192 金沢市角間町(かくままち)
     (理学部研究棟2階大講義室、別ページ案内図参照)
交 通  JR北陸本線「金沢」駅からバスで30〜35分、「金沢大学
     中央」バス停下車すぐ。金沢駅東口の11番乗り場から金沢大
     学行き(系統番号93,94,97)に乗車してください。発車時刻表
     は別ページにあります。
日 程 
 6月14日(土) 午前9時30分-12時   運営委員会(2階会議室216号室)
 6月14日(土) 午後1時-午後6時ごろ   特別講演(2題)と個人講演
                          <終了後 市内にて懇親会>
6月15日(日) 午前9時30分-12時   個人講演と特別講演(1題)
          午前12時-午後1時      <昼食・休憩>
          午後1時-午後3時     個人講演
          午後3時-午後4時     総会議事
          午後4時15分       閉会   
          (詳しくはプログラム参照)
●問い合わせ先(事務局移転中のため下記にお願いします)
 〒525-0001 滋賀県草津市下物町1091
 滋賀県立琵琶湖博物館 高橋啓一 電話077-568-4828(地学研究室) 
●金沢大学の連絡先 金沢大学理学部地球学教室 田崎和江氏 
 電話076-264-5736 
●宿泊についてはニュース83号でお知らせしてありますが、それ以外にも市内にビジネスホテルがいくつかあります。



プログラム

 6月14日(土)午後の部
 午後1時 開会のあいさつ        真野勝友(化石研究会会長)

 特別講演 (午後1時10分-2時50分)
 (1)九谷焼を科学する
         中道俊久氏(石川県工業試験場九谷焼技術センター)
 (2)温泉とトウフの環境学 in Kanazawa
          四ヶ浦 弘氏(金沢高校)

 特集テーマ「バイオミネラリゼーションとバイオレメディエーション」 (午後3時-6時)
 (1) 薩摩硫黄島北平海岸のAlを高濃度に含む白色海水とその中に生息する
  バクテリアの生体鉱物化作用
        佐藤一博、田崎和江、朝田隆二、長沼 毅
 (2) 原油を含む化石海水型温泉水中のバイオミネラリゼーション
         脇元理恵、田崎和江
 (3) 青森県白神温泉に形成されるバイオマットの砒素の生体鉱物化作用
        宮田浩志郎、田崎和江
 (4) Biomineralization of microorganisms in Kotelnikovsky hot springs, northwest coast of Lake Baikal, Russia
        Belkova N.L., Tazaki,K. and Asada,R.
 (5) 島根県津和野間欠泉におけるバイオマットの特徴と放射年代測定
        佐治一郎、山本政儀、田崎和江
 (6) バイオマットにおける放射性元素濃縮
        藤沢亜希子、田崎和江、山本政儀、栗原孝行
 (7) 阿蘇カルデラのリモナイト鉱床の成因--鉄酸化細菌、Gallionella ferruginea の成因
         盛一慎吾、田崎和江
 (8) 地すべり地帯における地下水-微生物相互作用
         瀬川宏美、白石秀一、高橋直人、田崎和江
 (9) Interaction of hydrocarbon-degrading bacteria with expanded pertlite, montmorillonite, and kaolinite in removing heavy crude oil: Implication for bioremediation processes
        Chaerun,S.Khodijah, Tazaki,K. and Asada R.
 (10) ブラジル、カラジャスの縞状鉄鉱床中の微生物の特徴
        田崎和江

         ------- 午後6時 14日の部 終了---------------
  懇 親 会 (午後6時30分ごろ-午後9時ごろ) 市内にて
         ---------------------------------------------

 6月15日(日)の部

 個人講演1 (午前9時30分-11時00分)
 (1)生体におけるリン酸アパタイト結晶形成機構の2経路について
         筧 光夫
 (2) 硬骨魚類全骨類ガーの歯の発生より見たエナメル質とエナメロイドの関係
          笹川一郎、石山巳喜夫
 (3)現生二枚貝に見られる靱帯部の線維構造について
         真野勝友
 (4)貝殻の殻皮にかかわる知見とその考察
          小林巖雄
 (5)酸素同位体比から推定できるクモヒトデ化石の古生息環境(予察)
          石田吉明、瀬戸浩二、藤田敏彦

 特別講演 (午前11時10分-12時00分)
 (3)福井県勝山市の恐竜化石の調査と研究について
         後藤道治氏(福井県立恐竜博物館)

          昼食・休憩 (12時〜午後1時)

 個人講演2 (午後1時-2時30分)
 (6)埼玉県見沼低地の完新世の化石群集
         小幡喜一、林弥生子
 (7)大阪市内の上部更新統上町層から産出した日本初記録のアジアザルガ化石
         石井久夫
 (8)人類の初期進化に関する諸問題?自然人類学ノートより
         後藤仁敏
 (9) 矮小円錐歯の癒合歯(過剰歯)の形態と組織構造およびその進化学的意義 について
         高橋正志、森 和久
(10) 千葉県染井横穴墓から出土した人骨について
         小寺春人、多古人類化石研究会

 総会議事 (午後2時40分〜3時40)
  閉会あいさつ
  終了 (午後4時)



  [化石研究の道具 No.5]
     マイクロ・フォーカス・CT

用途:化石や現生生物の硬組織を非破壊的にその内部構造が観察できる。これは医療機器として使用されるCTの小型版で、有孔虫からヒトの歯ほどの試料を対象に、X線による任意の部位の断面像や、この連続断面をコンピュータにより立体構築させた像を得ることができる。

性能:撮影視野72mm×54mm、空間分解能7μ、幾何学的拡大率30倍。
価格:本体 約1千6百万円から、専用コンピュータと計測再構成ソフト類 4百万円から。
サンプル持込使用料:1日使用 6万5千円から撮影依頼5試料まで 4万5千円から。
製造発売会社:日立メディコテクノロジー
 (http://www.hitachi-medico-techno.co.jp/ TEL. 04-7140-8273) 
 東芝ITコントロールシステムKK(http://www.toshiba-itc.com/
 コスモスキャンテクノKK(TEL045-944-1830) 日鉄エレックス社(TEL03-3246-6375)。

 筆者の独断からは、三つ目のコスモスキャンテクノの製品が安く、かつ性能その他の点からもオススメである。上記の性能、価格、使用料はコスモのものである。

観察例:筆者自身はヒトの歯と下顎骨、魚の歯を観察した経験がある。歯の観察では、顎骨に植立した状態で歯根を含めての歯の外形全体を立体的に捉えることができる。生きた動物でも、ラットぐらいだと麻酔下で撮影ができる。

歯の内部構造については、歯髄腔・根管の立体構造、エナメル質、象牙質、セメント質のそれぞれの立体構造が任意の角度から見ることができる。 しかし、分解能が10μ以下とされながらも、象牙質の象牙細管など、その組織構造はほとんど観察することができない。

骨の場合は、緻密骨と海綿骨の差異、骨梁の立体構造などは、もっとも得意とするところであろう。
有孔虫は、ちょうどSEMで観察したと同様な外形とともに、内部構造も立体的に見ることができるようだ。
また、魚の化石や現生標本の骨格の観察にも、クリーニングや染色なしで見ることができるのは、この装置の優れた点である。    (小寺春人)



質 問 箱

ここは新しい欄です。会員の皆さまから古生物学にまつわるさまざまな質問をお寄せいただき、会員の皆さまから答えていただきます。答のない場合もあります。このような場合や、掲載された回答に補足、異論、反論のある場合は、次号に投稿をいただきたいと思います。自由で活発な討論の場になるよう、ご協力をお願いします。

 

 質問1号 (84-001) 白井浩子

 38億年前の岩石に微小な細胞の化石があるのが、現在のところ、最古の細胞である、と本に書かれています。
 このような細胞はどのようにして残り得たのでしょうか。化石化の過程が明らかにされているのでしょうか。
 また、細胞である、との判定は、残存有機成分の分析などに基づく判断なのでしょうか。
 
 質問1号への回答 (84-002) 秋山雅彦

最古の化石とされている微化石は、西オーストラリアの北西部に分布するWarrawoona層群のApex玄武岩中のチャートから発見された構造物です(Schopf, 1993)。このチャート層の上下にある溶岩の年代測定結果をもとに、この年代は35億年前と推定されています。この構造物は数ミクロンの大きさの球状体が数十ミクロンの長さに連なったジュズモ(シアノバクテリア)の形態をとるとともに、 1.5ミクロン以下のバクテリア、3.5ミクロン以上のシアノバクテリアとその中間のサイズのものなど11種類が識別されています。つまり、細胞が残されているのではなく、ほとんど炭素だけの塊で、その形態とともに、炭質物の炭素同位体組成(δ13C)が−30‰前後の値を示していることから、生物起源の構造物であるとされています。しかし、最近になって、この微化石をふくむチャートが堆積性の層状チャートではなく、熱水(250-300℃)に起源をもつ石英脈に由来するという証拠が示され、それらの構造物は生物起源でないとする見解が出されています(Brasier et al., 2002)。



 質問2号 (84-003) 笹川一郎

 「骨はなぜカルシウムでできているの?」と知り合いの大学教員が学生から質問をうけました。手近な文献を調べてみると、
 1)Caは地表に豊富に存在する元素であること、地球表層では上から6番目、海水中では8番目、人体では6番目に多い元素である、
 2)その結果、生物はCaを運動、情報伝達、細胞間接着、神経刺激や筋収縮などの重要な生理活動の担い手として利用するようになり、Caの代謝、排出、貯蔵などコントロールする機構を発達させた。

 そこから、体の支持、防御、補食などに役立つ骨などの硬組織が生じてきた、としばしば解説されます。しかし、これはなぜCaなのか、他に地表に多い元素であるSi, K, Na, Mg, Fe, Alなどではいけないのか?の答えにはなりません。事実、単純なバクテリアや原生動物では磁鉄鉱を作るバクテリア、珪藻の珪酸の殻とかSi, K, Na, Mg, Fe, Alなどを使ったバイオミネラルがあります。このレベルでは特にCaでなくてもよかったのでしょうか?動物界になりますと炭酸カルシウム、リン酸カルシウムががぜん多くなります。Caを利用した生物が発展したのか、Caは他の元素より生物にとって使いやすいものだったのでしょうか(Caの化学的性質と細胞の相性の問題)? なぜ、Caが選択されたのでしょうか。

 質問2号への回答 (84-004) 寒河江登志朗

 この回答をということですが、これは身に余る(文字通り)問題です。
 ただ私の理解する限りにおいて、
 1)脊椎動物の進化、すなわち外骨格から内骨格へ、鱗から骨へ、という道筋があった。
 2)Caが細胞の活動にとって重要不可欠であった。なぜCaなのかについては細胞生理学のよりくわしい人に尋ねられた方がよいでしょう。
 3)骨はCa貯蔵庫として便利である。いつも改造している(しなければならない?)。他にも理由があるでしょうが、骨を多方面に役立たせているということが分かります。

 下記のHPがとても参考になると思います。
 http://www.asm.ne.jp/~milk/jimu/ca/mokuji.htm
  「カルシウムその基礎・臨床・栄養」のカルシウムの不思議、骨形成のメカニズムヒトの生涯における骨代謝。
 http://e-medicine.sumitomopharm.co.jp/e-medicine/kotsu_room/lecture/lecture_2/%20lecture2_top.html   または、
 http://e-medicine.sumitomopharm.co.jp/e-medicine/kotsu_room/lecture/index.html
  「生物の進化と骨」は一読に値すると思います。


[国際学会の案内]

Second Asia Symposium on Biomineralization (Second Circular からの抜粋です)

 第1回目のAsia Symposium on Biominerali-zation は北京で 1998年10月に開催されました。その後のアジア地域での biomineralization research の発展をふまえ、Second Asia Symposium on Biomineralization が北京のTsinghua University(精華大学)にて今年10月4-6日開催されます。ふるって、ご参加ください。
 テーマ
  A. Origin and evolution of biomineralization
  B. Physiological and biochemical control in biomineralization
  C. Crystalline progress of biological and bionic materials
  D. Vertebrate (bone, dentin, calculus and eggshell) biomineralization
  E. Microbial biomineralization and bio-ore formation
 The symposium will invite some famous scientists on biomineralization to give special lectures, and also set up a special forum to discuss the commonly interested problems at present

 場所 The symposium will be held in Yifu Scientific and Technical Building inside Tsinghua University. Accommodation is also arranged in Tsinghua Unisplendour International Centor .

 プログラム
 Oct 4th Registration / Oct 5th morning Opening address and plenary lecture / Oct 5th afternoon Session lecture / Oct 6th morning Session lecture / Oct 6th afternoon Plenary lecture and closing address

 ポスト巡検
 Chengjiang fauna and the Precambrian - Cambrian boundary, Kunming, Yunnan Province (4日間)

 登録締めきりは 7月31日です。 Second Circularと詳細を御希望の方は下記の会員にご連絡ください
 神谷英利(京都大学)、佐俣哲郎(麻布大学)、小林巌雄(元新潟大学)、笹川一郎(日本歯科大学、Tel: 025-267-1500 )



[新刊図書案内]

 Developmental Biology, 7th ed., Scott F.著
 Gilbert,Sinauer Associates, pp. 838, 2003.
 定評ある発生学書の7版がでました。www. devbio.comも御覧下さい。








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