化石研ニュース
No. 87

最終更新日:2004/10/22

   
2003年4月15日発行


化石研ニュース88
化石研究会第22回総会・学術大会のご案内


 さくら前線も北上し,琵琶湖湖畔に新緑がまぶしい季節になりました.
第22回(通算121回)総会・学術大会を下記の通り開催します.多くの会員のご参加を期待しています.

 ●期日 2004年5月22日(土)・23日(日)
●会場 滋賀県立琵琶湖博物館(セミナー室)
   (滋賀県草津市下物(おろしも)町1091番地)

【交通】JR草津駅(琵琶湖線新快速で京都から約20分、米原から約35分)西口から近江鉄道バ
ス「烏丸半島」行きで「琵琶湖博物館前」下車(約22分)すぐ
(交通案内はhttp://www.lbm.go.jp/でもご覧いただけます)
●日程 
5月22日(土)
    10:30〜12:00 運営委員会 
    13:30〜15:00 特別講演
    15:15〜17:20 一般講演
    (草津駅周辺にて懇親会)

5月23日(日)
    9:05〜11:00 個人講演
   11:00〜12:00 総会
   12:00〜13:30 昼食 
   13:30〜14:45 個人講演 
15:00 閉会

【特別講演】
5月22日(土)13:30〜15:00
講演者:中島経夫(琵琶湖博物館総括学芸員)
演題「琵琶湖の魚のおいたち−人間の営みと魚の関係−」
琵琶湖博物館研究部総括学芸員 中島経夫
 琵琶湖とその周辺の河川には,およそ70種の魚が分布している.この中にはオオクチバス,ブルーギルといった外来種が含まれる一方,もともと琵琶湖水域に生息していたアユモドキ,ニッポンバラタナゴ,イタセンパラがいない.これらの出来事は,近代から現代にかけての急激な人間活動の変化にかかわっている.それより以前はどうだったのだろうか.近世,中世,古代,さらにそれ以前から,人間とかかわりながら琵琶湖の魚は生き続けてきた.人間の営みなくして琵琶湖の魚たちのおいたちを語ることはできないのである.ところで,その反対に奈良盆地のワタカや三方湖のハスのように人為的な分布だと安易にいわれている.琵琶湖の固有種であるニゴロブナ,どこにでもいるカワムツやタモロコといった魚たちの繁栄が,人間の営みとどのようにかかわってきたのか,奈良盆地や三方湖のワタカやハスが人為的な分布ではないことを具体的な事実から説明してみたい.

【一般講演プログラム】
(*発表時間は15分,質疑応答10分で行います.)

●5月22日(土)
  • 15:15 生体アパタイトの中心線とオクタカルシウム・フォスフェイト(OCP)の比較研究:加熱処理後の微細構造とX線分析・・・筧 光夫(明海大学歯学部)、寒河江登志朗(日本大学松戸歯学部)、田村典洋(明海大学歯学部)、吉川正芳(明海大学歯学部)
  • 15:40 蛍光X線分析法による現生及び化石の歯の象牙質の解析・・・三島弘幸・大野由香・中石裕子・野村加代(高知学園短期大学)
  • 16:05 琵琶湖産淡水二枚貝の貝殻構造(アラゴナイト質稜柱構造)について・・・小林巖雄(新潟市)
  • 16:30 二枚貝マルスダレガイ科の内靭帯の微細構造」真野勝友(昭島市)
  • 16:55 ヒトの大臼歯にみられるエナメル突起の組織構造と元素組成に関する進化学的考察・・・高橋正志(日本歯科大学新潟短期大学)・後藤真一(日本歯科大学新潟歯学部)
●5月23日(日)
  • 9:05 新潟県能生沖の現生クモヒトデと新潟県産クモヒトデ化石との関連・・・石田吉明(都立千歳丘高校)・田村一利(新潟県立新津高校)
  • 9:30 日本および韓国産カワニナ属の遺伝的変異および形態型との関係について・・・神谷敏詩(東北大学大学院理学研究科)・島本昌憲(東北大学総合学術博物館)
  • 9:55 琵琶湖周辺域に生息するカワニナ種群の遺伝的変異と地理的分布・・・林 累平(東北大学大学院理学研究科)・島本昌憲(東北大学総合学術博物館)
  • 10:20 魚類エナメロイド形成におけるエナメル器の形態と機能・・・笹川一郎・石山巳喜夫(日本歯科大学新潟歯学部)
  • 11:00 総会
  • 12:00 昼食
  • 13:30 新潟県栃尾鮮新統産出のレッサーパンダ(Parailurus)上顎小臼歯の形態について・・・笹川一郎(日本歯科大学新潟歯学部)・高橋啓一(琵琶湖博物館)・作本達也(白峰村化石調査センター)・長森英明(産業技術総合研究所)・矢部英生(吉田建設)・小林巌雄(新潟市)
  • 13:55 Paleoparadoxiaの種分化と絶滅(予報)・・・犬塚則久(東京大学医学部)
  • 14:20 足跡化石の基礎研究−現在までにタイで観察した現生野生動物の足跡について−
  • 15:00 閉会



随想
『アメリカ大学研究生活46年』

南カロライナ大学 名誉教授 渡部哲光

 1.序
 今から半世紀近くも前のことだが、1956年の秋といえば、私は三重県立大学水産学部鹹水増殖学教室(現在は国立三重大学生物資源学部)の助手から講師に昇進して程ない頃で、夏の学生臨海実習を終え、その時採集したカキなど二枚貝幼生貝殻の偏光顕微鏡観察を行っていた。その時突然、アメリカはノースカロライナ州ダーラム市にあるデューク大学動物学教室のウィルバー教授からカキ貝殻微細構造の電子顕微鏡的研究をしないかという勧誘がきた。これは先発の同僚、辻井 禎講師の後任としてである。

 大学卒業以来の私の研究は、生鉱物学(バイオミネラリゼーション)に関するものであるが卒業後4年間は三重県志摩半島にある真珠の会社の研究部で過ごし、県立大学に移ってからも真珠や貝殻を構成する炭酸カルシウム結晶の成長を調べていた。しかしながら、このような光学顕微鏡的な研究結果は20世紀の始め頃、ドイツのシュミット、スエーデンのベギルドなどが随分詳しく報告しており、それ以上に進むにはもっと微細な構造を調べなければならない。

 ところが、問題の結晶の見掛けのサイズはせいぜい10ミクロン位で大変小さい。したがって細かいことはどうしても電子顕微鏡の力を借りなければならない。今でこそ殆ど全ての生物、物性科学関係の大学・研究機関、そして民間工場・研究所でもそれが備わっているが、その当時は旧制の大きな大学、主要研究機関は別として、新制の三重県立大学などでは、医学部でさえも電子顕微鏡は整備されていなかった。三重県賢島の国立真珠研究所には1955年に開所と同時に小型のものが設置されていたのでその器械も頼めば使えないこともなかったけれども、そこには同じ研究をする人がいてお互いにいろいろと気を使わねばならず面倒である。それで、時々東大や島津製作所などに出かけて試料を撮影して貰っていた。そんな状態だったから、ウィルバー教授の招きは私にとって非常に有難かった。

 デューク大学滞在の条件としては期間は九ヶ月、身分はリサーチ・アソシエート、給料は月に150ドルである。渡航旅費は支給しないからそちらで工面するようにとのことだつたが、航空運賃は700ドル近く、日本円で25万円(当時は1ドル=360円)で、私の給料のほぼ1年分に相当する。いろいろ当たってみたがどうしても工面できないのでその旨先方に知らせたら、それならこちらで出すという返事であった。

【次号につづく】



論文紹介

『オルドビス系から発見された新しい有刺ヒザラガイ』
Echinochition dufoei, A New Spiny Ordovician Chiton. Jour. Palaeont. 72(4) 646-654, 2003.
 合衆国ウィスコンシン州 Beloit 付近の Grand Petour 層の Forreston 部層から, 背面に左右相称の一列の殻板の両側の外方に突出した刺をもつ有刺多板類の化石が発見された.

  1. ヒザラガイの特徴である8枚の殻板をもち, 殻板上に左右対称の成長線が見られる.
  2. 尾板は剣状突起をもつほかは, ヒザラガイの特徴と共通である.
  3. 尾板は高まり軟体を僅かに被覆し, Paleoloricata(古有甲類)の特徴である広い頂板域をもち, 互いに接合被覆する殻板の一部が保存されている.
  4. 大きな筋肉笠の靱帯が存在し, その中に殻板, 楯板, 突起が納められているように思われる.
  5. 帯状骨片が存在したと思われる.
 この化石を採集した岩塊から, Helicotoma planulata, Trochonema sp., ?Lophospira sp. などの巻貝と, 緩巻殻の頭足類 aff. Beloitoceras sp., 二枚貝の Ctenodonata nausta, Cyrtodonta huronensis, Tancrediopsis sp. などのほか腕足類のStrophomenoid, 三葉虫の化石が発見されている. 殻板の形と位置はカンブリア系上部産の Matthevia variabilis によく似ているし, またオルドビス系下部産の Chelodes whitehousei にも似ている. ちなみに, 多板類の地質時代における分布は, カンプリア紀後期〜現世である.  前方が先端, 最前端の殻板は不完全だが, 他が補っている. 側方刺の上には成長線が見えるが, 殻板の上の成長線は良く見えない. (大森昌衛)


−化石の特別展情報−
2004年4月〜

札幌市博物館活動センター
  「生きている化石」展

  3月27日(土)〜5月15日(土) ※5/4,5/5は閉館

 生きている化石は意外と身近に生きています。化石と現在も「生きている」化石の両方の実物標本を展示します。地球の誕生から現在まで、生物はどのようにして生き残ってきたのでしょうか?

<展示資料>
生態展示=生きている状態で展示します。
標本=展示室では生きている状態でお見せするのが難しいので乾燥標本や液浸標本を展示します。

現在も地球上に生息している生物です。 隕石(フィリピン産 テクタイト) ストロマトライトの化石、現在の藻類 (生態展示) ウミユリ・・・化石種、今生きている種類(標本) トクサ(シダの仲間)・・・化石種、今生きている種類 (生態展示) イチョウ・・化石種、今生きている種類(生態展示) ソテツ・・・化石種、今生きている種類(生態展示) メタセコイヤの化石 アンモナイト、現在生きているオウムガイ (標本) カブトガニの化石、現在生きているカブトガニ (外殻) 、カブトエビ(生態展示) 、アルテミア(生態展示) ムカシトンボ(今生きている種類の標本) シーラカンス(化石種) 絶滅種ステラーカイギュウ(骨の一部、10分の1の模型) インドゾウの頭蓋、マンモスと現在生きているゾウの仲間の歯 など (同館のホームページより)

札幌市博物館活動センター TEL 011-200-5002 FAX 011-200-5003
http://www.city.sapporo.jp/museum/



茨城県自然史博物館
 第30回企画展「ハチたちの一億年-みがきぬかれた姿と生活-」 

  3月13日(土)〜 6月13日(日)

“刺す”ハチは、ごく一部のグループで、しかもメスしか刺しません。そして、昆虫の中で、甲虫やチョウの仲間に次ぐ大きなグループであることや、その生活様式が昆虫の中で群を抜いて多様性を有していることなどを紹介します。この展示で、こんなにもたくさんのハチが身近に生活していることを知ることでしょう!!!。 (同館のホームページより。ハチ入り琥珀も展示されるようです。)

〒306-0622 岩井市大崎700 茨城県自然博物館  電話0297-38-2000 HP http://www.nat.pref.ibaraki.jp/t/k/30/index.html(この企画展のページ)



茨城県自然史博物館 開館10周年記念展
  「恐竜たちの足音が間こえる一中国そして本一」 

  7月17日(土)〜11月14日(日)

 ゴビ砂漠やその周辺では、さまざまな恐竜が次々と発掘されています。中国内蒙古自治区博物館の協力により、この恐竜たちが大繁栄していた時代、現在の豊かな内蒙古の草原など、環境の多様性や移り変わりや、そこに息づくさまざまな生物について紹介します。  また、開館10周年を記念し、海外の姉妹・友好館の特別展示とともに、当館の開館10年のあゆみについて振り返ります。(同館のホームページより。)

〒306-0622 岩井市大崎700 
茨城県自然博物館 電話 0297-38-2000
http://www.nat.pref.ibaraki.jp



幕張メッセ
  「驚異の大恐竜博」

  7月16日(土)〜9月12日(日)

 詳しくはhttp://www.kyoryu.jpをご覧下さい。



豊橋自然史博物館 第19回特別企画展
  「恐竜後の世界一よみがえる新生代の生き物たち一」

  7月16日(金)〜9月12日(日)

 化石といえば、恐竜が大きく取り上げられることが多いですが、恐竜が絶滅した後の時代からもさまざまな生きものの化石が見つかります。この特別企画展では、これらの生きものを植物園、水族館、動物園という3つのコーナーに分けて展示していきます。

 展示室に入ると動く恐竜がみなさんをお出迎えし、巨大なアンモナイトに触ることもできます。植物園では、美しい植物化石や大きなヤシの葉の化石、水族館ではクジラの全身骨格レプリカや巨大なサメの歯、動物園では日本が亜熱帯だったころの哺乳類パレオパラドキシアや、約200万年前の日本にいたアケボノゾウの全身骨格レプリカなどを展示します。触ったり、レプリカをつくったり参加体験コーナーも数多く用意しています。

441-31 豊橘市大岩町字大穴1-238 豊橋市自然史博物館
http://WWW.toyohaku.gr.jp/sizensi/
(同館の吉川さんから教えていただきました)



『漂着物考展一浜辺のミュージアム―』
 
2004年3月5日(金)〜5月21日(金) 
 休館日=水曜日 入場料=なし

 概要=四面環海、赤道まわり4万キロにも匹敵する世界有数の長い海岸線をもつ日本では、古来多くのものが海流にのってやってきた。今展では、心惹かれて採集した漂着物を展示し、潮に洗われた表情に隠された、驚くほど豊かなメッセージを伝える。科学や文化や経済や環境など、あらゆることの今が、漂着物には刻まれている。

会場=INAXギャラリー大阪
〒550-0013 大阪市西区新町1-7-1  INAX大阪ショールーム2F
TEL 06-6539-3518 (化石研レポーター鈴木明彦さんより)



徳島県立博物館
  サメの世界 

  4月22日〜5月25日

 エイ類やサメ類について、新化の道筋や多様な形態、生活様式等を、化石や剥製、模型などにより紹介。 (「博物館研究」誌「4月のもよおし」より)
〒770-8070 徳島市八万町向寺山 文化の森総合公園内 徳島県立博物館

電話 088-668-3636



内外の学会案内

 ・Scanning 2004  April 27-29.
 
   Hotel Washington, D.C.
   http://www.scanning.org

 ・第16回国際解剖学会 16th International Congress of the IFAA, 

   August 22-27,2004. Kyoto, Japan
   http://www.ifaa2004.org

 ・第8回アジア―太平洋電子顕微鏡学会議・日本顕微鏡学会第60回学術講演会 8APEM,
 
   June 7―11, 2004. 
   石川県立音楽堂, 全日空ホテル.
   http://www.bcasi.or.jp/ism/ or  http://www.kanazawa-med.ac.jp/

 ・Intenational Tooth Morpho-genesis and Development Meeting, 
   July17-21, 2004. York, UK.
   http://www.kc1.ac.uk/depsta/cradev/whoswho/TMD08.html

 ・8th Internationa1 Conference The Chemistry and Bio1ogy of Minera1ized Tissue. 
   October 17-22, 2004. Banff Centre, Alberta, Canada.
   http://www.ICCBM.org

 ・第2回バイオミネラリゼーション地域シンポジウム 
   2004年10月4 - 6日, 北京, 清華大学:
   詳細は化石研ホームページで紹介しています.
   

 ・64th Annua1 Meeting of the Society of Vertebrate Pa1eontology 
   Adams Mark Denver Hotel. Nov. 3 - 6, 2004
   http://www.vertpa1eo.org/meetings/index.html
   


化石研ニュース No.87 04・4・15
編集・発行:化石研究会事務局 〒525-0001
滋賀県草津市下物町1091番地
滋賀県立琵琶湖博物館 地学研究室内
TEL. 077-568-4828 FAX. 077-568-4850
http : //www.kaseki.jp






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