化石研ニュース
No. 89

最終更新日:2004/10/23

   
2003年10月1日発行



第122回化石研究会例会のお知らせ

来る11月7日(日曜日)に、横浜市の鶴見大学において化石研究会例会を以下のとおり開催します。会員の方をはじめ広くご参集くださいますようご案内申しあげます。今回は、脊椎動物の形態学と進化に関わる講演、人類の起源に関する新説の講演、またダーウィンの進化論の原点にあると言われるダーウィンフィンチに関する講演を予定しています。

 日時:2004年11月7日(日) 9時30分-16時40分
 会場:鶴見大学歯学部2号館第10講堂
 交通:JR京浜束北線「鶴見」駅下車(東京駅から約30分)、西口から徒歩5分。
     京浜急行線「京浜鶴見」駅下車・徒歩8分。
 
★全国運営委員会は、前日の2004年11月6日16時30分から18時30分まで7日と同じ会場で予定されています。

プログラム
◆講演1【09:30-11:00】藤田祐樹氏(東京大学大学院農学生命科学研究科生物多様性科学研究室)
  「鳥とヒトの二足歩行」
◆講演2【11:05-12:35】島 泰三氏(日本アイアイファンド代表)
  「骨食と直立二足歩行」
<昼食〉
◆講演3【13:30-15:00】遠藤秀紀氏(国立科学博物館動物研究部)
  「動物遺体からデータを取るための日常」
◆講演4【15:05-16:35】佐藤秋絵氏(鶴見大学歯学部解剖)
  「Origin and phy1ogeny of Darwin's finches」




随想
『アメリカ大学研究生活46年』(3)


南カロライナ大学 名誉教授 渡部哲光

 今とは違って空港の荷物引き取り場所は狭く混雑していた.しかも暖房が効きすぎで冬のまっ最中というのに,汗が流れるように暑く,周りからは早口の鼻にかかって出てくるアメリカ英語,笑声,甲高く叫ぶ声,そしてエアラインのアナウンスメント,呼び出しなどがガンガンと耳に入り,荷を取る人,人を押し分けて荷を探す人の中に交じって,もう頭がクラクラして今までの快適な気分はすっとんでしまい,疲れが急に出て来てボーツと突っ立っていた.

 日本話で「どうした」と肩を叩かれて我に帰ると,出迎えてくれた私と同じ大学医学部の助教授の方だった.しかし,今のように何処でも大勢の日本人に出会うのとは違い,我々以外の殆どはみんな毛色の違った人達で,ここには,想像していたように,アメリカの,そしてニューヨークの雑踏,熱気とがあって,始めてアメリカに来た感激を味わった.実はこの為にわざわざ,ニューヨーク経由のスケジュールを組んだのである.

 若い,エネルギッシュな国,それを想像し,それを感ずる第一の場所としてニューヨークを選んだわけ.しかしそれ以上は小遣いも無く閑も無いので彼に故郷からのことづけものを渡し,予約をして貰ってあったマンハッタンの中心にあるコロンビヤ大学の国際学生会館に泊まり,翌朝早く,ラガーディア空港に向かった.明け方,大学図書館の直ぐそばのグラント将軍(南北戦争時の政府軍総司令官,18代大統領)の大きな墓が曙光に黒く浮きでているのが印象的であった.

 ラガーデイアからはイースタン航空(当時の大手航空会社だったが,大分前に倒産し消滅した)のコンステレーション機でほぼフオール・ライン(Fa111ine一爆布線)に沿ってワシントン,リッチモンド経由ダーラムに向った.南に行くにしたがって,下界は緑の森林がつづき,リッチモンド空港もダーラム空港も森のまっただなかにあり,木は殆どが松であった.

 ご承知のように,アメリカ大陸西部はロッキー山脈,東部はアパラチア(アパレーシアAppa1achia)山脈がそれぞれ西部,東部の大陸分水嶺となっている.後者はメイン州からアラバマ州までつづいていて,古生代・先カンブリア代の火成岩と変成岩から成り,ノースカロライナ州には東部最高峰一と言ってもそれほど高くはないが一のミッチェル山(2,040m)ほか1500m位の山々が連なっている.(南北カロライナ州では古生代・先カンブリア代のこれらの岩石は結晶岩一crystalline rockと呼ばれている)この山脈の東縁部は前出の結晶岩に加えカロライナ・スレート帯などを主とするピードモント台地(Piedmont Plateau)に続き,台地はさらに軟らかい砂質のシルト,およびローム層からなる沿岸平野に移行する。

 ヴァージニア・ノースカロライナ州では州のほぼ中央部が平野の西端となっていて,平野表層は西部の白亜紀から順次に束部海岸地方の第四紀の地層が露出している.この平野が台地と接触する地帯をフォール・ラインと呼び,しばしば爆布,急流を伴う.この線に沿って古来,商・工業都市が発達した.北部のフィラデルフィア,ワシントン郊外のジョージタウン,そしてリッチモンド,ダーラム,ラーレイ(ローレイ)などがその例である(ノースカラロライナ,サウスカロライナ両州の地質についてはまた後で触れる).

 実はこのフォール・ラインについては中学二年生の時,今は何という科・目名になっているか知らないが,"外国地理"の授業で習ったので一度見たいと思っていた、とにかくこのワシントンからダーラムまでの飛行はピードモント台地の沿岸平野への移行をかいま見るのに最適であつた.

 さて,ダーラム空港にはウィルバー教授が迎えに来てくれた.その晩は教授の家に泊めて貰って,夕食後は,書斎と運動部屋のある地下室でピンポンをして遊んだが,なぜ遊んでくれたのか今もってわからない.いずれにせよ,大きな部屋で,大学の教授がこんな事ができるような家に住んでいるとは当時の日本では全く想像もつかなかった.
 翌朝はべ一コン,トースト,コーヒー,紅茶の朝食だったが,そのうちにちょうど日本の味噌汁の匂いのように,このベーコンやソーセジを焼く匂いが一日の始まりを告げることを知った.昼は,日本人の若い研究者が車で迎えに来て,彼が予め予約をしておいた下宿に運んでくれた.そこは大学の東キャンパス(East Campus)の近くにあり,動物学教室のある西キャンパスまでバスで15分くらいの,割に閑静な2階建ての個人の家である.

 私の部床は2階の1室で,大きなベッドとベッド脇のサイド・テーブルとスタンド,そしてたんすと小さな机・椅子,スタンドがあった.食事は付かないが,タオルなどが7組揃えてベッドの上においてあり,シーツと共に毎週変えてくれる.部屋代は1週間で20ドルだったと思う.後でわかったが,私の他に2人のデューク大学学部学生が1人ずっ2階の各部屋に下宿していた.暖房はスチームで矢張り大変暑かったが,とにかくこれが私の南部アメリカ生活の第一歩であった.

【編者註】:つづいて2.デユーク大学での研究生活(1957年一1970年)を予定しています.また参考文献は一括して最後に記します.

【次号につづく】


−化石の特別展示情報−

◆ミュージアムパーク茨城県自然博物館
  特別企画展「恐竜たちの足音が聞こえる一中国そして日本」

  7月17日-11月14日
 
◆栃木県立博物館テーマ展
 「栃木県の脊椎動物化石」
 
7月10日−3月31日

◆栃木県立博物館企画展
 「脊椎動物の進化一5億年の旅一」

  7月17日-9月12日

野尻湖ナウマンゾウ博物館開館20周年記念特別展
 「中国のナウマンゾウとその時代の動物化石」

  7月17日−11月29日


◆神奈川県立生命の星・地球博物館
  特別展「東洋のガラパゴス小笠原一固有生物の魅力とその危機一」

  7月17日-10月31日

◆中津川市鉱物博物館
 「石川地方の鉱物一日本のペグマタイト産地その2」

  8月1日−11月7日)


◆瑞浪市化石博物館特別展
 「日本の化石シリーズ9一近畿の化石一」

  10月10日−12月5日


◆大阪市立自然史博物館
 「IODPちきゅうってなに? 地球を調べよう」
  
10月30日−11月7日


◆愛媛県立博物館テーマ展
 「赤石山系の変成岩」

  10月1日−11月28日

◆◆御船町恐竜博物館企画展
 「恐竜時代の海」
  
8月23日−10月11日



新刊紹介

☆『自然再生一持続可能な生態系のために』
鷲谷いづみ著 中公新書1752
2004年6月 (720円十税)
 20世紀後半、人間中心の消費主体のライフスタイルによって、自然の多様性は急速に失われつつある。里山再生や淡水生態系の復活に携わってきた著者が、自然再生の思想と方法を、特に生態学の視点から提言したものである。

☆『森と里と海のつながり一京大フィールド研の挑戦』
京都大学フィールド科学教育研究センター編、えい出版社(東京)、
2004年8月 (1950円十税)
 京大フィールド研に所属する研究者24名が、それぞれの専門分野について、一般向けにわかりやすく解説したものである。2004年6月-8月にかけて、京都大学総合博物館の企画展として開催された内容を骨子としており、<森の科学>と〈海の科学>を統合した<森里海連環学〉が提唱されている。また、京大フィールド研の研究体制や今後の展開についても触れられている。

☆『地層と化石でタイムトラベル』
地学団体研究会編 大月書店、
2004年8月 (1800円十税)
 本書は「シリーズ自然だいすき」の第1巻として出版された冊子である。図や写真が多く、文章もこなれていて読みやす。子どもたちが楽しみながら野外観察や室内実験ができるように工夫されている。旧版の「自然にチャレンジ」の改訂版にあたるが、内容的には刷新しており、第1巻の執筆者・編集委員の労力によるところが大きい。また、全5巻になるということなので、これからの続巻も期待される。(以上鈴木明彦)

☆『ナノテクノロジーのための走査電子顕微鏡』
日本表面科学会編 丸善、
2004年 (3600円)
 近年いろいろな分野で、たとえば、チーズやアイスクリームなど乳製品、かまぼこなどの練り製品,あるいは化粧品といった産業分野で、走査電子顕微鏡が使用されてきている。そのようなさまざまな方面の走査顕微鏡の試料作成法や観察法が紹介されており、輿味深い。値段も手頃であり、ミクロの分野に興昧ある方にお勧めしたい。(三島弘幸)



海外の学会案内

64th Annua1 Meeting Society of Vertebrate Paleontology
  Nov., 3-6, 2004 Adams Mark Hotel, Denver Co1orado, USA
  http://www.vertpaleo.org/

65th Annua1 Meeting Society of Vertebrate Paleontology
  Oct., 19-22, 2005 Sheraton Phoenix East Hote1, Phenix, AZ, USA
  http://www.vertpaleo.org/

◆ 83rd General Session of IADR (TheInternationa1 Association for Dental Research),
  March, 9-12, 2005, Baltimore, MD, USA
  http://www.dentalresearch.org/

◆ Seventh Symposium on the Composition, Properties and Fundamenta1 Structure of Tooth Enamel
  April, 10-14, 2005, 0cean Edge Resort & Go1f Club, Brewster

◆ Annua1 Meeting of the Continenta1 European Division
  September, 19-22, 2007, Thessa1oniki, Greece

◆ 44th Annual Meeting The American Socie1y for Cell Biology,
  Dec. 4-8, 2004, Washington Convention Center, Washington, DC, USA
  http://www.ascb.org/

◆ Scanning 2005,
  Apri1, 5-7, 2005, Monterey California, USA
  http://www.scanning.org/

(三島弘幸)
 


◇ お願い◇

  • 化石研究会会誌第37巻第1号(2004・7)の巻末に掲載した会員名簿に誤りや変更がある会員は至急事務局までお知らせ下さい。
  • 会費納入について2003年度の納入状況は73.3%です。諸経費が圧迫していますので、未納の会員は滞りなく会計までご送金下さい。
   年会費:一般4,000円 学生:2500円


化石研ニュース No.87 04・10・1
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滋賀県立琵琶湖博物館 地学研究室内
TEL. 077-568-4828 FAX. 077-568-4850
http : //www.kaseki.jp







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