化石研ニュース
No. 96

最終更新日:2006年11月23日

   
2006年11月5日発行



第126回例会のお知らせ

第126回例会を下記の通り開催いたします.今回はバイオミネラリゼーションをテーマにして
シンポジウムを行います.また,2日目には新江ノ島水族館の見学も企画しております.
多くの方のご参加をお持ちしております.

 日時:2006年12月16日(土)〜17日(日)
会場:麻布大学100周年記念ホール(8号館7階)(地図参照)
内容:
  16日(土)13:00〜17:30
   「バイオミネラリゼーションと進化」「バイオミネラリゼーションの機構(有機基質と結晶形成)」
   についてシンポジウムを行います.
    プログラムは次ページをご覧ください.
  
  17日(日)11:00〜(10:50に水族館前集合)
     新江ノ島水族館見学
     水族館の担当者の案内でバックヤードも見学します.この日だけしか参加できない方もぜひどうぞ.
     (入館料1800円+バックヤード見学料500円が必要です.)

  *運営委員会は,16日の10:00〜12:00まで行います.運営委員の方はお集まりください.
    詳細は運営委員長より連絡いたします.

 

麻布大学への交通案内
 JR横浜線「矢部駅」下車,駅北口より徒歩5分で大学正門に着きます.詳しくは麻布大学の
ホームページhttp://www.azabu-u.ac.jp/t-info/をご覧ください.

新江ノ島水族館への交通案内
住所:〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸2-19-1 電話:0466-29-9960
ホームページhttp://www.enosui.com/index.html



2006年12月16日(土) シンポジウムプログラム

Session A: バイオミネラリゼーションと進化 (13:00 ‐14:45 )

1) 13:00 - 13:30 魚類におけるエナメル質とエナメロイドの進化
笹川一郎(日本歯科大学新潟先端研)・石山巳喜夫(日本歯科大学新潟解剖U)
エナメロイドとエナメル質の両方を有する魚類の歯において,両者の構成物質や形成機構を観察した結果より,エナメロイドとエナメル質の進化を考察する.

2) 13:30 - 14:00 エナメル質組織の進化と細胞学的背景
小澤幸重(日本大学松戸歯学部解剖)
エナメル質構造の石灰化機構とその細胞学的背景から進化について検討を加える.

3) 14:00 - 14:30 無脊椎動物の硬組織中のタンパク質‐構造・機能・進化的観点から ‐
更科 功 (筑波大学生命環境科学)
硬組織中のタンパク質に関して,現在得られている構造・機能・進化に関する情報を概観し,多細胞動物の硬組織の進化についての考察およびカンブリア紀の爆発に関する一解釈を報告する.

14:30 - 15:00 総括討論

15:00 - 15:15 休 憩

Session B: バイオミネラリゼーションの機構(有機基質と結晶形成)
(15:15 ‐17:30)

1) 15:15 - 15:45 アコヤガイ真珠層と稜柱層の形成機構(仮題)
野川ちひろ(麻布大学環境保健学),小原真美(WDB高崎支店),小澤裕美(麻布大学環境保健学部),佐俣哲郎(麻布大学環境保健学)
軟体動物殻体真珠層と稜柱層の形成に関わる遺伝子の構造解析と発現に関する解析結果を報告する.

2) 15:45 - 16:15 軟体動物方解石殻体の形成機構のin vitroでの解析(仮題)
池田大輔(麻布大学環境保健学)、梶川彩(WDBエウレカ)、佐藤秀義(神奈川県警察本部)、野川ちひろ(麻布大学環境保健学)、佐俣哲郎(麻布大学環境保健学)
軟体動物殻体葉状層の方解石殻体形成に関与する有機基質タンパク質のin vitroでの機能解析に関する報告を行なう.

3) 16:15 - 16:45 溶液散乱法を用いたナクレインの構造解析(仮題)
法月美智子(麻布大学環境保健学),佐藤 衛(横浜私立大学国際総合科学)
佐俣哲郎(麻布大学環境保健学)
溶液散乱法を用いて,軟体動物殻体形成に深く関与するナクレイン分子の構造解析を行い,その結晶形成における役割を検討する.

4) 16:45 - 17:15 電場とポリアクリル酸の協調作用による炭酸カルシウムの結晶成長
和田徳雄(首都大学東京大学院都市環境科学)
CaCl2−(NH4)2CO3 反応系を用いて,ポリアクリル酸の存在下でキトサン膜上および分極処理されたヒドロキシアパタイト基板上に形成した炭酸カルシウムの結晶成長について報告する.

17:15 - 17:45 総括討論
 
*例会終了後,懇親会を大学内のカフェテリアで予定しております.






バイオミネラリゼーションワークショップ
への参加のお誘い
以下のワークショップが開催されますので,お知らせいたします.






新 刊 紹 介

☆『眼の誕生 カンブリア紀大進化の謎を解く』
アンドリュー・パーカー著,渡辺政隆・今西康子訳,草思社,382p.,
2006年(2200円+税)

カンブリア紀の初め(5.23億年前)に起きた進化の大爆発は,肉食動物が眼を獲得する事によって食う・食われるという関係が激化し,硬い殻による防衛のための装備がなされることで起きたという.これが著者Andrew Parkerの「光スイッチ説」である.

この書物を半信半疑で手にしたものの,読んでいくうちに,光の物理学・眼の解剖学・生態学と適応,そして古生物学と各分野の知識を基礎としての科学的検討が説得力をもって迫ってくる.思わず引きこまれ,一気に読み終えてしまった.三葉虫を始めとするバージェス動物群の構成種がカンブリア紀の海中をどのように見ていたのかが強い説得力をもって説かれている.

本書は次の10章からなる.1.進化のビックバン,2.化石に生命を吹き込む,3.光明,4.夜のとばりにつつまれて,5.光,時間,進化,6.カンブリア紀に色彩はあったか,7.眼の謎を読み解く,8.殺戮本能と眼,9.生命史の大疑問への解答,10.では,なぜ眼は生まれたのか.

最後の3つの章では眼の発生とその原因についての議論がなされている.眼の網膜のタンパク質は,扁形動物の眼点と触・化学受容器とに見つかるタンパク質に由来するとし,最初に出現した節足動物の複眼の誕生までには100万年程度の期間で可能であったという.このような眼に関する発生学や比較生物学上からの推定は化石の証拠とも合致する.オーストラリアのエディアカラ丘陵から産出した三葉虫は硬組織の外骨格をもたないが,明らかに軟組織の三葉虫である.

その三葉虫には眼はないものの,カンブリア紀になって眼が誕生した位置には隆起部が認められるという.私たちにとって関心の深いカンブリア紀になって獲得した石灰化能については,その時代における捕食動物による淘汰圧に由来するとしている.しかし,カンブリア紀の大爆発をもたらした眼の誕生の外因として,先カンブリア時代の地球環境の変化が検討されてはいるものの,その結論が示されるまでには至っていない.

著者は1967年,英国生まれの若い生物学者で,オーストラリア博物館在職中に海ホタル類(節足動物門貝形綱)の研究で博士号を取得,本書の「光スイッチ説」は1998年の発表.現在は英国自然史博物館動物研究部の研究リーダーである.

(秋山雅彦)

☆『ちいさな自然誌 −美守のみどりと水辺でー』
   A4版、172頁(オールカラー)
   頒布価格1500円(税込み)+送料

この本を作った人たちの郷土の野山を愛する気持ちが表れた、美しい本です。

新潟県上越市の三和地区に美守(ひだもり)というところがあります。沖積の高田平野に洪積台地と第三紀層の里山が接し、豊かな自然が残っています。この本はその美守の植物と動物の四季折々の様子をたくさんの写真で記録したもの。地史も含め解説がついていますが、説明は最小限で、全体にまるで絵本か写真集を見ているようです。従来の説明的な地域自然ガイドとはかなり違っています。確かに、自然をまず体感するところから、事は始まるのでしょう。

化石は出てきませんが、日本列島には多様な生き物が住む、すばらしい自然があり、それが氷河期をとうしてどのように作られ、育くまれてきたか、改めて考えさせられます。そして、美守だけでなく、私たち自身の周囲はどうでしょう、と問いかけてくれる本です。

なお、この本にかかわった方々のなかには本会の会員も何人か居られます。この本をご希望の方は発行人の丸山郁子さんへ連絡すると1500円と送料で分けてくださるそうです。

  連絡先:〒942-0264 上越市三和区塔の輪617  丸山郁子様

 (笹川一郎)




各地の博物館特別展

●栃木県立博物館 テーマ展「おもしろ化石あれこれ」 4月4日〜12月10日 
一般的にはあまり知られていない生痕化石や微化石、生活の様子や過去の出来事を示す化石などを集めて展示します.

●群馬県立自然史博物館 「コアラ大陸オーストラリア−ふしぎな動物たちの世界」 
7月15日〜11月26日 開館10周年記念企画展。特徴的な生物やオーストラリア産化石を標本や写真パネルで紹介.

●産業技術総合研究所地質標本館 特別展「人類と社会の未来をつなぐ地質時代 −日本の第四紀研究50年−」 10月3日〜11月12日 展示内容は、袖ヶ浦の脊椎動物化石群・花室川のナウマンゾウ化石及び近辺の石器標本,筑波の環境地質図,霞ヶ浦,関東平野の沖積層,地中レーダー探査,活断層,海溝型地震イベント,地震災害,火山,旧石器文化等に関するパネルほか.

●狭山市立博物館 「かせき・KASEKI・化石−埼玉の古生物」 10月7日〜12月10日 埼玉県立自然の博物館との共催。県内で発見されたアケボノゾウをはじめとする化石の展示.

●ディスカバリーパーク焼津 特別展「体験ナゾとき〜石のふしぎ展〜」 9月16日〜12月3日.

●中津川市鉱物博物館 「長島鉱物コレクションと蛭川の鉱物」 10月3日〜2月4日 旧蛭川村の標本を中心に、長島鉱物コレクションを展示。最近発見された新鉱物など蛭川産鉱物も紹介.

●光記念館 隕石・恐竜展「6550万年前の地球に何が起こったか」 〜12月10日
好評につき会期を延長。一部資料も入れ替え恐竜と隕石のかかわりについて学べる.

●瑞浪市化石博物館 特別展「四国の化石」 10月12日〜12月3日 四国地方の徳島・香川・愛媛・高知県より見つかった代表的な化石を紹介します。今回は、古生代(4億年前)の三葉虫やサンゴ、中生代(2億年〜6千5百万年前)のアンモナイトや植物、新生代(4千万年前以降)の貝やナウマンゾウなどの化石を展示します.

●兵庫県立人と自然の博物館 ミニ企画展「自然史からみた兵庫の海 −地層や化石で知る100万年のおいたち−」 9月9日〜11月5日 このミニ企画展では,兵庫県の豊かな自然のうち,その海に焦点を当てての紹介が行われます.第四紀に関連する県内産の貝化石やナウマンゾウ化石,材化石など多くの標本が展示されます.

●愛媛県立博物館 テーマ展「恐竜時代のアンモナイト」 9月30日〜12月24日.

●高知県立牧野植物園 「植物化石展〜化石でたどる植物の進化」 8月15日〜11月30日 牧野植物園では平成15年に惜しまれつつ閉館した南園の旧化石館の展示を、新たにリニューアルして企画展示室で公開します。本展では、海から陸上へと進出し、地球を緑で覆い尽くし、花を咲かせて今日の地球生態系の骨格を築いた植物の進化の歴史を中心に、豊富な化石約100点とパネルで紹介します。三葉虫や巨大恐竜がいた時代の植物たちが、太古の世界へ誘います。

<この欄は、博物館研究や全科協ニュースの紹介記事、ネットで「化石 展示 2006」などで検索して得た情報を基に作成しました>


■寄 贈
「よみがえる恐竜・古生物」(ティム・ヘインズ,ポール・チェンバーズ著,椿 正晴訳,群馬県立自然史博物館監修,215pp,A4版,定価2800円)を寄贈いただきました.化石の写真と大変迫力のあるCGの復原画が組み合わせて解説してあり,見て楽しい本です.お勧めします.

■ホームページの更新
化石研究会のホームページhttp://www.kaseki.jp/history_akiyama.htmlに秋山雅彦会員による化石研究会の歴史についての論説が掲載されましたのでご覧ください.

■会費の納入をお願いします
2006年度会費の納入をお願いします.未納の方には振替用紙を同封してあります.
 年会費 4000円(学生2500円)
郵便振替 00910-5-247262 「化石研究会」


化石研ニュース No.96 06・11・5
編集・発行:化石研究会事務局 〒525-0001
滋賀県草津市下物町1091番地
滋賀県立琵琶湖博物館 地学研究室内
TEL. 077-568-4828 FAX. 077-568-4850
http : //www.kaseki.jp





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