化石研ニュース
No. 97

最終更新日:2007年3月15日

   
2007年3月8日発行



第25回総会・学術大会のお知らせと一般講演演題募集

日時:6月2日(土)〜3日(日) 
会場:埼玉県立自然の博物館 
内容:シンポジウム・一般講演
(詳細は次号のニュース(4月末発行予定)でご連絡いたします.) 

一般講演の発表時間は,1題15〜20分の予定です. 
【講演演題の申し込み】 締切り:4月15日(日)(必着)
     申し込み方法:郵送あるいはメールで,講演者名,演題,発表機材
(液晶プロジェクター,OHP,スライド)をお知らせください.
 【講演要旨の締切り】 4月30日〔日〕演題,発表者(所属),要旨をA4,
1枚でおさまるようにして,メールあるいは完成原稿を郵送してください.
【送り先】〒350-1305 埼玉県秩父郡長瀞町長瀞1417-1
埼玉県立自然の博物館 楡井 尊 宛

 


第126回例会の報告

 第126回例会が2006年12月16日・17日に麻布大学の佐俣哲郎会員のお世話で開催されました。

 16日は麻布大学100周年記念ホールで「バイオミネラリゼーション」のシンポジュウムが催され、7題の講演と総合討論が行われました。講演の前半は「バイオミネラリゼーションと進化」(3題)と題して、無脊椎動物の硬組織のタンパク質、魚類のエナメロイドおよび哺乳類のエナメル質を中心とした総論的な話題提供がありました。

 後半は「バイオミネラリゼーションの機構(有機基質と結晶)」(4題)で、軟体動物の殻形成と炭酸カルシウムの結晶形成について最新の知見を聞くことができました。バイオミネラリゼーションの研究はさまざまな分野で進められているにもかかわらず、総合的に研究の交流をする場が国内外共にまだ少ないのが現状でしょう。

 いままでも化石研はいくつかの国際学会や国内シンポジュウムなどに積極的にかかわってきました。今後もこのテーマでの先端的な役割が期待されています。また、バイオミネラリゼーション研究での化石研の特色を生かした視点としては「進化」、微細構造から発展した「形態から分子へ、分子から形態へ」さらに「生態系への応用」ではないでしょうか。そういう意味で今回の例会は着実な一歩といえます。なお、このシンポジュウムの内容から会誌40巻1号(今年7月発行予定)の特集が組まれる予定です。ご期待ください。

 17日は新江ノ島水族館を見学しました。水族館の方の案内でバックヤードツアーも行われました。魚類のみならず、クラゲ類など豊富な種類の水生動物が展示されていて、興味深く見学しました。とりわけ、特別展示の「しんかい6500」が採集した深海の動物は、バックヤードからも見せていただき、飼育の苦労話も聞けて圧巻でした。この見学だけに遠方から参加した会員もいたくらいです。私個人としては、かわいいネコザメ達とタッチ水槽で遊ぶことができて大満足でした。

 最後にお世話いただいた麻布大学の佐俣会員と院生・学生さんにお礼申し上げます。



*シンポジウムのお知らせ*

◎「第3回アジア地区生鉱物シンポジウムの開催が決定」

 中国と日本、韓国などの研究者が中心になって行われてきたアジア地区のバイオミネラリゼーションの研究集会は、第3回が今年の11月に中国・福建省の廈門で開催されることになりました.2004年の第2回(北京・清華大学)に引き続くものです.

 期日は21日から23日で、その後見学旅行が24日〜26日にあります.集会の会場は廈門大学です.廈門は台湾のちょうど対岸に位置し、亜熱帯的な環境の温暖で風光明媚なところです.集会のテーマは以下の通りです.

 A. 生体物質
 B. バイオミネラリゼーションのナノスケールでの生理的・生化学的制御
 C. ナノスケールにおける生物的な結晶化の過程
 D. 生体物質の合成と組織の工学
 E. ナノスケールでの脊椎動物のバイオミネラリゼーション
 F. 生体鉱物とタンパクの相互反応

くわしくは下記のホームページを参照してください。
 http://med.xmu.edu.cn/ASB3/EPost-symposiumfieldtrip.html


◎「The symposium "15th Biological Control of Crystallization"」

 開催場所: Salt Lake City, Utah,
 開催日:2007年8月 12-17日.

 アブストラクト締切:2007年3月15日
 主催者Chairs: Roger Qiu, (Lawrence Livermore National Laboratory, USA),
 Nico A.J.M. Sommerdijk (Eindhoven University of Technology, Netherlands)

 詳しくはhttp://www.crystalgrowth.us/iccg15/index.phpを参照してください.



篠山層群からの恐竜化石の発見


 兵庫県篠山市および丹波市山南町には下部白亜系の篠山層群が分布する。篠山層群は淡水性軟体動物,カイエビ,植物の化石を産出する陸成層として以前から知られていたが、脊椎動物化石の産出に関してはまったく報告が無かった。2007年8月7日に地元丹波市在住の村上茂・足立洌さんにより丹波市山南町上滝の篠山川河床に露出する篠山層群下部層より竜脚類と獣脚類の化石が発見された.足立さんと村上さんは大学時代の同級生同士で、それぞれ高校の英語教師、映写機メーカーの会社員をされていた。定年後、何年かぶりで再開したのをきっかけとして、以前から地学に興味をもっていた足立さんの提案で、丹波・篠山周辺の地層の観察を始めたところであった。

 同年8月7日〜9日午前に両氏は独力で肋骨一本と尾椎1個を発掘し、9日午後に、恐竜の化石ではないかといことで兵庫県立人と自然の博物館にこれらの化石を持ち込まれた。肋骨の一部がクリーニングされている状態であったが、破断面に骨組織が露出しており、大型脊椎動物の化石であることは明らかであった。まだ陽が高かったので、直ちに発見者と現地に行き、砂礫層と互層する赤紫色の泥岩の中に肋骨の断面を確認した。白亜系の陸成層からの産出でしかもかなり大型なので恐竜であることは間違いなかった。

 同年9月27日〜29日には削岩機を用いてこの地点を試掘し,十数点の恐竜の化石を採取した。試掘に先立って進めたクリーニングにより発見者によって採集された尾椎には竜脚類の特徴が見られることが分かっていた。これを支持する材料として試掘によりさらに保存良好な竜脚類の尾椎と血道弓が獣脚類の歯のかけらと一緒に産出し、竜脚類一頭に由来する骨がある程度まとまって埋まっている可能性が出てきた。丹波市山南町の産地は国内では屈指の恐竜化石の産出地点であることは明らかであったが、化石を含む露頭は河床に露出し、しかも比較的目立つところにあった。そこで、侵食・盗掘による損失を防ぐため早期に発掘を行うべく極秘に準備を進めることとなった。

 2007年10月中ごろまでには試掘で得られた血道弓には竜脚類のティタノサウルス類によく見られる特徴のあることが分かってきた。2007年12月には関係者の努力により予算のめどが立ち、1月中旬マスコミ公表、発掘準備工事着工の予定で準備を進めていたところ、1月1日に神戸新聞は恐竜化石産出に関する記事を掲載した。一部関係者から流出した情報をもとに博物館の同意なしに行われた報道であった。急遽不正確な内容を訂正するために同月3日に博物館は記者発表を行ったが、予定よりも半月早いマスコミ公表となり、混乱は避けられなかった。現場では、急遽警備体制がとられ、博物館では臨時展示を、現地では住民向けの緊急説明会を行った。これにより、経費、人員両面で予定外の負担がかかった。現在多くの地方自治体は、兵庫県も含めて厳しい財政状況にあり、その中で緊急発掘の予算を工面することは決して容易なことではない。日程は限られた予算を最大限有効に使うために綿密に立てられており、それを乱されることは正直言って大変迷惑であった。

こうした混乱はあったが、予定通り一月中旬に発掘準備工事は着工され、2月中旬には化石含有層の発掘が始まる。発掘面積は3X7mであり、けっして広いとはいえないが、これは最低限期待される化石産出量と予算のつりあいで決まったものである。試掘よりもさらに高密度で骨が埋蔵されていることが確認された場合は二次発掘の必要性が出てくる。本文を会員諸氏が読まれているころには、こうした点はすでに明らかになっていることであろう。

 (三枝春生)



編集部注:この記事は2月に書いていただきました.現在本格的な発掘が開始され続々と保存のよい骨化石が発見されているようです.



いま私の足跡化石研究は?


 早いもので今年でもう19年経ちます。全国の新生代からの産地は山形県、岩手県から四国は愛媛県、九州は大分県、佐賀・長崎県まで48箇所以上になりました。この産地の増加は1988年、滋賀県の野洲川河床での大発見時には5〜6箇所だったのですからすごいスピードで増えてきたことになります。この新発見の影には地元の研究者のたゆまない調査があることを忘れるわけにはいきません。その成果は足跡化石だけでなく、貝や咽頭歯や骨化石の新発見にもつながっているのです。しかし、全国的に眺めると足跡化石のおかれている立場はまだ低く、すばらしい大発見が夏の夜空を焦がす一発の花火のように、いま足跡は流れにまかせて身を削っている状況です。

 なぜ、古足跡学はいまだに魅力がないのでしょうか。私は、この未知の学問に取りつかれて19年、全国の産地の大半を観察させてもらい、それに伴う現生の野生動物の足跡と生態を追っています。その過程で思うことがふたつあります。そのひとつは足跡化石の形態の多様性に関わる問題で壁に当たることが多い。もうひとつは現生の野生動物の生態と足跡の観察が欠かせない。でもその資料の蓄積が大変である。このふたつの難関が足跡化石を研究する人の前に立ちふさがっているのではないだろうか。

 でも、どんな学問でも同じこと。先駆的なことをするにはミスを恐れず、大きな成果を望まず、着々とデータを積み重ねていくのみ。私は開業医でしたがいまはやめています。研究で飯を食っている学者でもありません。日ごと増える足跡の資料と国内外の友人との語らいを楽しみに、結果は未来に託してのんびりとやっています。来年の20周年記念を前に、今年は野洲川で地元の子供たちを募って足跡化石掘りをします。そして2008年秋には大きなイベントを地元教育委員会や博物館といっしょにやろうと話し合っています。

(岡村喜明)



各地の博物館特別展

●仙台市科学館 小さな恐竜展 〜4月15日
 来夏の特別展のプレ企画として、市内小・中学生が思い描いた恐竜の世界を展示。

●山梨県立博物館 「オオカミがいた山−消えたニホンオオカミの謎に迫る−」
2月6日〜3月18日 
 剥製や骨格標本、オオカミ信仰関連資料などをもとに、絶滅したニホンオオカミの謎に迫る。

●東海大学自然史博物館「ゾウの仲間とその進化」 
1月2日〜4月8日
 ゾウはどのような動物から進化、発展して現在に至ったかを、立体的に展示。

●名古屋市立科学館 特別展「ようこそ恐竜ラボへ〜化石の謎をときあかす」 
3月17日〜5月27日
 日本初のコリトサウルスの全身骨格など恐竜標本の展示、再現された恐竜の発掘現場や研究・復元作業現場をめぐり、発掘から組立てに至るまでの研究のプロセスを通して、恐竜の謎に迫ります。

●滋賀県立琵琶湖博物館 鉱物・化石展「続・湖国の大地に夢を掘る」 
3月20日〜5月6日
 愛好家が集めた滋賀県内の鉱物,化石が広い企画展示室いっぱいに集まります.

●徳島県立博物館 トピックコーナー「阿讃山脈から産出した和泉層群の化石」 
1月16日〜4月1日
 今回の展示では、特に徳島県と香川県の県境の阿讃山脈から見つかったアンモナイトや二枚貝、巻貝などの化石を紹介します。香川県高松市塩江町で発見され、最近当館に寄贈されたウミガメ類(オサガメ科)化石も展示します。

<この欄は、博物館研究や全科協ニュースの紹介記事、ネットで「化石 展示 2007」などで検索して得た情報を基に作成しました.小西省吾>



事務局だより


■寄贈:「貝が語る縄文海進 ‐南関東,+2℃の世界」
松島義章 著,有隣新書 pp.219,定価:本体1000円 (松島義章氏より)

 本会の会員である松島義章氏がご自身の調査成果を元に書かれた新書である.本書では,約一万年前以降の日本列島沿岸の変遷のようすが描きだされている.

 各章のタイトルは以下のとおり.T貝からのメッセージ,U相模湾沿岸の海岸線の変遷,V東京湾沿岸の海岸線,W房総半島南端‐サンゴ礁が発達する暖かな縄文の海,X南関東における海進最盛期以降の地殻変動,Y伊勢湾知多半島で明らかになった縄文海進の記録,Z温暖種からみた日本列島沿岸の環境の変化,[日本列島で明らかになった温暖種の消長,\ハワイ諸島カウアイ島における完新世の高海面の発見.
地球温暖化が叫ばれている昨今,+2℃の世界は注目される内容である.




■会費の納入をお願いします
2007年度会費の納入をお願いします.
  年会費 4000円(学生2500円)
  郵便振替 00910-5-247262 「化石研究会」


化石研ニュース No.97 07/3/8
編集・発行:化石研究会事務局 〒525-0001
滋賀県草津市下物町1091番地
滋賀県立琵琶湖博物館 地学研究室内
TEL. 077-568-4828 FAX. 077-568-4850
http : //www.kaseki.jp





Copyright(C) 化石研究会